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ジャニーズ屈指のカメレオン俳優の新境地

生田斗真
生田斗真Getty Images

公式サイトに何点か写真が掲載されているが、生田のトレードマークとも言える笑顔はない。まぶたや頬のあたりに力が入っていない様子で、眉間にしわを寄せ、瞳の奥からは “諦め”のような感情が伝わってきた。

本作が描くのは“絶望”とも違う、ごく普通の生活の先にある“上手くいかない状況”。生田はそんなシチュエーションがもたらす渇きをリアルに演じている。

映画俳優としての生田といえば、裸で股間だけを隠すなど強烈なインパクトを残した、映画『土竜の唄』シリーズを思い浮かべる人も多いかもしれない。しかし、彼が演じる役柄はコメディリリーフにとどまらない。

生田の映画初主演作は2010年公開『人間失格』。同作で生田が演じるのは、酒と女に溺れ、破滅的な人生を送る主人公・大庭葉蔵。時代に溶け込み、声からも感じる素朴さと時折見せる爽やかな笑顔で、美少年である葉蔵に説得力を持たせた。

徐々に表情を曇らせ、言葉を飲み込んだような含みのある表情。セリフはそう多くないものの、少しずつ破滅の道へと進む様子を“静かに”熱演している。

一方、2017年には少女漫画原作の実写映画『先生!、、、好きになってもいいですか?』では、人間不信に陥り心を閉ざした高校教師・伊藤貢作役を演じ、さらには早くからLGBTや家族のあり方をテーマにした映画『彼らが本気で編むときは、』では、トランスジェンダーの主人公・リンコ役を好演。生田がこれまでに演じてきた役は幅広く、複雑な胸の内を抱える役どころも多く演じてきた。

これまでスクリーンで数々の個性的な役柄を演じてきた生田だが、『渇水』では、どこにでもよくいる“普通の人物”に扮し、誰しもが直面する可能性のある、普通の生活の先にある困難に見舞われ、足掻く。映画俳優・生田斗真の新しい一面が見られるという点において、本作は必見である。

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