目の動きと声の抑揚で魅せる
ラブストーリーへの出演は実に6年ぶりという山下。今回は視覚障害を持つ難役に挑む。
冒頭の漫画家として奮闘しているシーンでは、作者としてのポリシーを曲げなければならない提案を受ける。将来のため、背に腹は代えられないと言わんばかりに先々を見据えた決断。“清濁併せ吞む”という含みのある複雑な表情を浮かべていたのが印象的だ。
だからこそ朗報から一転、視覚を失った直後の「なんで俺なんだ…」と荒ぶる姿が響いて、胸が痛んだ。
これまでの作品でも、セリフがない場面で見せる目の演技に惹きつけられてきた。今回はセリフや感情と、視線が必ずしも合致しなかったり、表情がクリアに見えない場面も登場したりするが、声の抑揚、頬のわずかな動きに姿勢、全身を使った“心からの芝居”は、観る者の心に深く訴えかける。
山下は今作で主題歌を手がけており、俳優としてもアーティストとしても、渾身の作品と言ってもいいだろう。思い返すと山下は、過去の出演作品でも年齢性別を問わず楽しめたり、世界を取り巻く問題について深く考えさせる側面を入れ込むなど、様々な角度から観る者を魅了してきた。
ジャニーズJr.時代から数えると、山下智久のキャリアは27年にも及ぶ。山下の作品と一緒に年齢を重ねてきたという人も多いだろう。活動歴を重ねても、新たなチャレンジに取り組み続ける山下の“今”が、映画「SEE HEAR LOVE」には詰まっている。彼のキャリアに思いを馳せながら、じっくり堪能してほしい一作だ。
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【作品情報】
『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』
出演:山下智久、新木優子、高杉真宙、山本舞香、深水元基、菅原大吉、渡辺大、加藤雅也、山口紗弥加、夏木マリ
原作:NASTY CAT
監督:イ・ジェハン
脚本:イ・ジェハン
主題歌:山下智久
2023年製作/132分/日本
配信:Amazon Prime Video