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トトロ、古き良き日本の象徴~演出の魅力

『となりのトトロ』のワンシーン。トトロ
となりのトトロのワンシーントトロ© 1988 Studio Ghibli

本作は、1988年公開の『天空の城ラピュタ』(1986年)に続くスタジオジブリ作品第二弾。監督は宮崎駿で、公開当時は高畑勲監督の『火垂るの墓』との同時上映となった。

これまで何度もテレビ放送され、いまや“国民的アニメ”と化した感のある本作。公開当時の興行成績は「風の谷のナウシカ」に及ばなかったものの、公開当時から高く発売されたビデオやDVDは軒並み高セールスを記録し、テレビ放送でも軒並み高視聴陸を記録している。

本作の最大のポイントは、なんといってもトトロだろう。“子どもにしか見えないふしぎな生きもの”という設定は、想像力を具現化するアニメならではのものであるとともに、古き良き日本の象徴でもある。

現に、高畑勲は自著でこのように記している。「宮崎駿のもたらした最大の恩恵はトトロだと私は思う。トトロは普通のアイドルキャラクターではない。トトロは全国のこどもたちの心に住みつき、こどもたちは木々を見ればトトロがひそんでいることを感ずる。こんなに素晴らしいことはめったにない」(高畑勲「エロスの火花」より)

本作の舞台は、昭和30年代の埼玉県所沢市。劇中で一瞬だけ映るカレンダーの日付から、1952年および1958年が舞台となっているのではないかと推測できるが、宮崎駿自身は「テレビのない時代」と語っており、特定の時代に根ざした物語であるというよりかは、舞台そのものがファンタジーに近い、と考えたほうがいいだろう。

ちなみに「トトロ」という名前も「所沢」から来ているという説がある。高度経済成長期で日本人が失ってしまった心性が、トトロというキャラクターに詰まっているのかもしれない。

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