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サツキとメイの見た世界のリアリティ~映像の魅力

『となりのトトロ』のワンシーン。メイが迷子になってしまった場面。
となりのトトロのワンシーンメイが迷子になってしまった場面© 1988 Studio Ghibli

あらすじからも分かる通り、本作には『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』に見られるような派手なアクションは登場しない。その代わり、本作では、サツキとメイの目を通して見た世界が臨場感たっぷりに描出されている。

例えば冒頭の引越しのシーンでは、裏山に登場するクスノキが極端に大きく描かれる。これは、子どもであるサツキとメイの視点から見たクスノキと考えることができるだろう。また、中盤、母が入院する病院からサツキとメイの元に電報が届くシーンでは、2人の顔に影が入り、以降はサツキとメイを遠くから捉えたロングショットの絵が多く登場。音に関しても、セミの鳴き声が強調され2人の孤独感が際立たされる。

また、本作の美術監督である男鹿和雄は、故郷である秋田を参考に、昭和30年代の田舎の原風景を描いている。トトロが暮らす森や洞窟、土間のあるサツキとメイの家など、古き良き日本を思わせる情景に、思わず懐かしさを感じた方も多いことだろう。

なお、男鹿はその後『おもひでぽろぽろ』(1991年)や『平成狸合戦ぽんぽこ』(1994年)、『もののけ姫』(1997年)でも背景美術を担当。ジブリ作品には欠かせない存在になっている。

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