“時代劇”という体裁の経済ドラマ
ストーリーが進むにつれ明らかとなる、多額の借金の理由を見ると、現代に通じるような、中抜き・賄賂・裏金のオンパレードであり、その根底には、お役所的な「前例踏襲主義」がはびこっていることが見て取れる。
本作の時代から180年も経っているというのにも関わらず、まるで現代劇を見せられているようだ。また、高齢者となった団塊世代が作ったツケを、若い世代が払わされている現在の社会構造を皮肉っているようにも見える。
つまり本作は、“時代劇”の体裁を示しながらも、「借金100億」という設定を通じた、経済ドラマであり人間ドラマでもある。
この借金額が1億円や10億円であれば、“悲劇”として描かれるかも知れないが、“100億円”という途方もない金額だからこそ、もはや笑うしかない喜劇として成立するのだ。
非常にハッピーなエンディングを迎える作品だったが、人間とはいかに学習しない動物なのかと痛感させられ、加えて、時代や年齢を問わず、強欲でズルい人間とは必ず存在することを教えてくれるドラマでもある。
(文・寺島武志)
映画『大名倒産』は6月23日(金)全国公開!
原作:浅田次郎「大名倒産」(文春文庫刊)
主演:神木隆之介
出演:杉咲花 松山ケンイチ 小日向文世 / 小手伸也 桜田通 / 宮﨑あおいキムラ緑子 梶原善 / 勝村政信 石橋蓮司 髙田延彦 藤間爽子 カトウシンスケ 秋谷郁甫 ヒコロヒー 浅野忠信 / 佐藤浩市
監督:前田哲
脚本:丑尾健太郎、稲葉一広
音楽:大友良英
主題歌:GReeeeN「WONDERFUL」(ユニバーサル ミュージック)
プロデューサー:石塚慶生、西麻美
製作:『大名倒産』製作委員会
配給:松竹
公式サイト: 公式サイト
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