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豪華俳優陣による演技合戦―配役の魅力―

『もののけ姫』美輪明宏が声優を務めたモロの君。『お前にサンが救えるか』とアシタカに言っているシーン
もののけ姫美輪明宏が声優を務めたモロの君お前にサンが救えるかとアシタカに言っているシーン© 1997 Studio GhibliND

本作の豪華さは、脚本や映像だけではない。声優にも、実写映画でもお目にかかれないほど豪華な俳優陣が顔をそろえ、さながら演技合戦の様相を呈している。

まずは、アシタカ役の松田洋治。『風の谷のナウシカ』ではアスベルを演じている松田は、宮崎から「凜とした少年を演じられるのはこの人しかいない」とのお墨付きを受けて起用されている。

そして、サン役を務めるのは当時27歳の石田ゆり子。1987年にデビューし、既にドラマの主演を務めた石田だったが、本作では数十回に及ぶNGを出し、「降ろされるかもしれない」と思ったとのちのインタビューで語っている。

新人の石田に対し、堂々たる貫禄を見せつけたのがエボシ御前役の田中裕子だ。気高くも冷淡で、どこか脆さを感じさせる田中の声は、まさにエボシ御前そのもの。彼女の魂の演技を見て、宮崎と鈴木敏夫もプロデューサーも思わず唸り、絶賛したという。

また、モロ役の美輪明宏も、威厳のある中性的な声で人間への愛憎が入り混じる複雑なモロの内面を表現している。特に「黙れ小僧」「お前にサンが救えるか」といったモロのセリフは、スタジオジブリ作品に残る名言として語り継がれているのは言うまでもない。

なお、モロと乙事主が会話するシーンのレコーディングで、美輪の演技に違和感を感じた宮崎は、「モロと乙事主が昔いい仲だった」との設定を美輪に伝達。その途端、モロの声に色気が加わり、OKになったという。

ちなみに美輪自身はこの時のレコーディングについて、「母性があって残酷で、達観していて慈悲があって凶暴で…それだけの要素をひと言で表現しろと言われて殺意を抱きました」と回顧している。

本作にはほかにも、ジコ坊役の小林薫、甲六役の西村まさ彦、アシタカの村の長老ヒイ様役の森光子、乙事主役の森繁久彌ら、錚々たる役者陣が脇を固める。鑑賞する際には、キャラクターの向こう側にいる俳優の顔を思い浮かべてみるのも楽しいかもしれない。

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