ジブリの総力を結集した迫真の美術―映像の魅力―
先述の通り、本作には他のジブリ作品には見られないグロテスク描写が散りばめられている。特に冒頭、アシタカの村にタタリ神が襲来するシーンや、アシタカの矢で野武士の腕や首が飛ぶシーンは、子どもにとってはトラウマレベルの恐ろしさだろう。
本作では、こういった「うごめき」を表現するため、従来のジブリ作品の2倍以上となる約14万枚が用いられており、宮崎自身「ジブリを使いつぶす」と言われるほどの覚悟で制作に臨んでいるという。
なお、本作の彩色には、スタジオジブリ初となる3DCG処理が導入されており、サンの顔に付着した血液やデイダラボッチの表現には3DCGが用いられているほか、タタリ神の職種の表現や植物が芽吹くシーンにも3DCGによる流体シミュレーション機能が導入されている。
また、美術にもスタジオジブリの総力を結集。『となりのトトロ』(1984年)の見事な背景表現でおなじみの男鹿和雄に加え、山本二三、田中直哉、武重洋二、黒田聡という一流スタッフによる前代未聞の5名体制で臨んでいるほか、近藤喜文監督作品『耳をすませば』でも辣腕を振るった福留嘉一が特殊美術としてCG背景を担当している。
作中に登場するエミシの村とシシ神の森の舞台は、それぞれ白神山地と屋久島。制作にあたって宮崎らは実際に綿密なロケハンを行い、日本ならではの自然を壮大なスケールで表現している。