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「登場人物全員が奥田庸介だと思う」「凄く繊細な人」
奥田監督の背中を見て演じた

写真:武馬怜子
写真武馬怜子

―――試写を観に行かせて頂いた回が、ちょうどキャストの方々がいらっしゃった時で、スクリーンに映っている姿と全く違うので驚きました。

田中「18キロくらい落としたのかな? 売れない漫画家がもりもりに太っていたらちょっと嫌だなと思って」

―――では役のビジュアルについては、ご自身で考えられたのですか?

田中「そうですね。自分で勝手にやっていました」

―――とても愛を持って演じられているなと思いました。

田中「舞台の稽古ではリハーサルをして出来上がったものを提示しますが、映像ではその時に出しきるので、少しでもふざけると崩れてしまうなと思って。だから撮影現場では大人しかったよね」

笠原「こんな感じじゃなかったです。ずっと静かで。俺、その時の田中さんが一番好きでした」

一同「(笑)」

笠原「今の田中さんはよく分からないことばかり言ってますけど、その時は物静かで『カッコいいじゃん』って思っていました。だから終わった後、びっくりしました」

田中「クランクアップの瞬間、『わー!ふざけられる!』って(笑)。撮影中もふざけたくて仕方がなかったけど、それで崩れたら取り返しがつかないから」

―――役作りで構築したものが崩れてしまうと危惧されたのでしょうか?

田中「僕はこの映画に3人の奥田庸介が描かれていると思っているんです。僕の演じた役はそのうちの1人だと思っていました。リハーサルや現場での一挙手一投足に目を澄ませて『この監督は一体どんな人なんだろう』と観察していたのですが、凄く繊細な人じゃないですか。だからそういう部分を大切にして、自分の役を演じたいなと思っていましたね」

笠原「僕は撮影前に監督と会った時、『歯医者に行ってきた』と言われ、詳しく話を聞くと、本当に自分の歯を半分削っていたんです。監督は最初、『抜いてくれと』と真剣に頼んだそうですが…」

田中「でも歯医者から『生えているものを抜く必要はないんじゃない?』と言われ、削ることにしたそうです」

笠原「監督からその話を聞いて、『これは真剣にやらなきゃダメだな』と思いました。さっき田中さんが言ったとおり、僕も、登場人物全員が奥田庸介だと思っているんです。例えば、劇中で出版社の編集長が『この漫画面白いけど、これじゃ売れないんだよね』というシーンがありますが、これは監督自身が実際に言われた言葉が基になっているそうです。また、『女子高生のアイドルを主演にして映画にしてみたら?』と言われたこともあったようで、監督は凄く悔しかったみたいです」

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