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「観終わった後に始まる映画」「自分を救うために演じた」
本作を通して考える人生とは

写真:武馬怜子
写真武馬怜子

―――笠原さんが演じたのは、自身の内部に存在する残酷性を表出させるキャラクターだと思いますが、どのようにしてその感覚を掴みましたか?

笠原「僕、中学時代にトイレで学食のうどんを食うような人だったんです。肩身が狭くて、みんながいる前では食べられなくて。トイレで食べるけど、でも器は返さないといけないから、なんとか学ランに隠して学食に戻すみたいな。

めちゃくちゃ卑屈な中学生だったんですよ。だからと言って物凄く根暗かというとそういう訳でもなく、部活もやっていたし、そこでははしゃいでいる自分もいて。とはいえ、学生時代は特に楽しい思い出もないですし、ずっと鬱屈とした気持ちを持っていました。

そんな中、この役をいただいて、上手く表現できるかは分からないけど、この役の心は持っている。だから『これはイケる!』と、根拠のない自信はありましたね」

―― 一方、田中さん演じた役は、人生に上手く行かない人です。自分と役の性格がマッチしないと思うようなところはありましたか?

田中「無かったですね。恐らく、どんなに取り繕って生きていても、嫉妬したり失敗したりと、一枚皮を剥がしたら人間みんな同じなんじゃないかなと。だからどの役に対しても共感しました。

この作品は形容しがたいけど、全員に通ずるものがあるんじゃないかなと思います。笠原が演じた役にしてもそうだし、どの役に対しても自分と全く違うとは思いませんでした。意外と世の中の人みんなそうなんじゃないかな…」

笠原「そうですね。俺はこの映画を観て、今までの人生とこれからの人生について考えさせられました。

僕はよく『人生って何なんだろう』と思うことがあるんですけど…。例えば集合住宅を見ると、そこには一人ひとりの人生があり、それを思うと怖いと感じるんです。この映画を観た時の感覚はそれに近いのかもしれないですね。僕はこの作品で、今までの人生で他人に分かってもらえなかったことや、自分の辛さを表現することができて、やりがいを覚えました。かつて、トイレでうどんを食っていた自分を救うために演じたと言ってもいいかもしれません。

映画は作品としてずっと残りますから、10年後でも、20年後でも、『青春墓場』を観てくれた人に『救われた』という感情を持ってもらうことができたら一番嬉しいですね」

田中「意外とみんなそうなんじゃない?だから『さぁ映画を観よう』と思って観る人には辛いかもしれない。みんなリンクして理解するから辛いと思うし、『そうだよね』ってスッと共感できる人もいるかもしれないし。そういう感じだよね」

―――最後にこれから観る方に、お一人ずつメッセージをお願いします。

田中「難しいねー。これ先言ってよ」

笠原「難問ですね」

田中「これから観る人にかぁ…。それだけは今日考えてこないといけなかったよ」

笠原「そうっすね。宿題でしたね」

田中「これから観る人にか…」

(笠原、取材用に準備してきたメモを取り出す)

―――今までで1番考えますね(笑)。本作は特に観る前に提示出来ないというか、したくないという感じですもんね。「とりあえず観てくれ」という心境でしょうか?

田中「これは観てもらわないと分からない。だって観終わってその人の中で始まる部分もあるし、それは人によって違うから『こうです!』って言えないというか」

―――観終わった後に全然違う感覚になりました。バイオレンスだったはずだったのに、なんだか温かい気持ちになるような。

田中「そうなんですよね。それと毎回笑いが起こるんですよ。これから観る方に言葉を贈るとしたら、『観終わってからお会いしましょう』、ですかね」

―――お〜素晴らしいです!

笠原「会える役者なんすか」

田中「じゃないと共通項がないんだもん。これムズイね」

笠原「以前、別の所で言った時は…」

田中「言ってるんや」

笠原「言って、これミスったかもなぁとあまり納得いってないんですよね。だからここではミスれないなと思って」

田中「メモしたことを忘れたんだ」

笠原「いや、メモしたことを言ったんですけど、なんか違ったなと思って」

田中「じゃあ今日メモ通り喋ってたの?」

笠原「いやいやいや、俺そんな器用じゃないですよ。田中さん、もう言ったんですか?」

田中「俺、言ったことにして頂いている」

ーー ばっちり決まりましたよね!

笠原「はい、決まりました。こんな僕にしかできないものがあるはずだと思って、みんなと一緒に魂を共鳴して作りました。是非映画青春墓場ご覧ください」

―――おおー(拍手)。

笠原「ありがとうございます」

田中「メモしてた?」

笠原「それは今パッと思いついて」

―――降りてきましたね! 本日はありがとうございました!

(取材・文:福田桃奈)

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