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海と俊の不器用なセリフ回しー配役の魅力

© 2011 高橋千鶴・佐山哲郎・Studio Ghibli・NDHDMT
© 2011 高橋千鶴佐山哲郎Studio GhibliNDHDMT

主要なキャラクターに専業声優ではなく俳優を起用することが多いスタジオジブリだが、本作も例外ではない。主要キャストはもちろん、チョイ役に至るまで、一線級の俳優が配役されている。

まず、本作の主人公である海を演じるのは、声優初挑戦となる長澤まさみだ。吾朗によれば、長澤は当初明るい声で海を演じていたが、無愛想でぶっきらぼうな声で演じたところ、海のキャラクターに見事にハマったのだという。

また、俊役を演じるのは、吾朗の前作『ゲド戦記』で主人公を演じた岡田准一。岡田も長澤同様、いささか無愛想なセリフ回しで、内面に頑なさを抱えた戦争孤児である俊を巧みに演じている。

このほか、俊の親友・水沼役の風間俊介、海の祖母役の竹下景子、海の実母・良子役の風吹ジュンなど、錚々たる役者陣が出演。また、コクリコ坂の住人・北斗役には『もののけ姫』サン役の石田ゆり子、同じくコクリコ坂の住人・広小路役には『千と千尋の神隠し』(2001年)千尋役の柊瑠美が起用されており、ジブリファンには嬉しいサプライズになっている。

とはいえ、宮崎駿が棒読みと演技のギリギリを攻め、「不器用な感情の発露」として表現しているところを、本作では単に平板なセリフ回しになってしまっているように感じられる。このあたりは、宮崎吾朗の演出力不足と言えるだろう。

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