ヒロイン・ヒミを演じたのはあいみょん
“唯一無二の声”で映画を力強く牽引
続けて、紹介するキャストは、本作随一のサプライズだろう。異世界で眞人が出会うヒロインであり、実は亡くなった眞人の母・ヒナの若いころの姿。劇中で最も複雑なキャラクター・ヒミの声に扮したのは、国民的シンガーソングライター「あいみょん」だ。
自身が主題歌を担当した『クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン ~失われたひろし~』(2019)にて、「あいみょん」という自身そのものの役として、ほんのわずかなシーンではあるが声優を務めた経験はあるものの、大役を任されるのは本作が初めて。ヒミは実質、『君たちはどう生きるか』のヒロインである。
しかし、その演技は何の違和感もないどころか、演技がこなれていない分、キャラクターが発するエネルギーがより生々しい形で表現されており、素晴らしい。彼女の声の美しさもさることながら、声優としてのポテンシャルを見抜いた宮崎駿および鈴木敏夫のキャスティングセンスには思わず舌を撒く。
宮崎駿が、あいみょんの名曲『マリーゴールド』や『君はロックを聴かない』などを聴いて、「この人の声いいなあ…」と思ったかどうかは定かではないが彼女の抜擢は、声優界、いや映画界を揺るがす大事件と言ってもいいだろう。