7年間の沈黙が最大のセールスポイント
そんな宮崎駿監督の新作『君たちはどう生きるか』のタイトルは、1937年に出版され高く評価された吉野源三郎の小説『君たちはどう生きるか』から取られている。
吉野による小説の内容は、コペルというあだ名の15歳の少年・本田潤一と、彼の叔父が、精神的な成長、貧困、人間としての総合的な体験と向き合う姿を描いた作品だ。
映画『君たちはどう生きるか』では、第二次世界大戦中に空襲で母親を亡くした少年を題材に、愛する人の死後の治癒の過程が描かれており、吉野源三郎の小説の内容とは関連性はない。
本作は、予告動画の公開はおろか、キャスト陣の紹介や、写真などの宣材さえ存在しないといった、一般的な映画公開とは正反対のアプローチを取り、公開に至るまで、秘密のベールに包まれたままの作品となった。
そんな映画界の巨匠で、アニメ界で最も神聖なスタジオ「スタジオジブリ」の共同創設者である彼は、映画監督から引退し、もう彼の新しい作品を視聴することはできないと多くの人が予想していたところに、突如として戻ってきた。
それ自体が本作の大きなセールスポイントとなったのだ。
宮崎駿は、10年前に公開された映画『風立ちぬ』(2013)を持って、映画監督を引退すると思われていたが、実は、90年代にも一度引退を試みており、彼にとってこれは2度目の引退の試みとなっていた。
引退撤回を繰り返す彼だが、現在、年齢は82歳。新作『君たちはどう生きるか』の制作期間はおよそ7年だ。この内容を考慮すると、彼の新しい作品をスクリーンで視聴できるのは、本当に本作が最後となるかもしれない。
既に多くのものを私たちに与えてくれた宮崎駿だが、明らかにまだ何か伝えたいことが他にあるようだ。宮崎駿が最後に私たちに伝えたいこととは一体なんなのか。ぜひ劇場で確かめてほしい。
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