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庵野監督とスタッフの衝突は「無駄」だったのか

浜辺美波
浜辺美波Getty Images

『シン・仮面ライダー』の製作過程を追ったドキュメンタリーは、ライダーのデザインの方向性を決める会議からスタート。そこでは一流クリエイターたちが、斬新なアイディアを提供するも、最終的に庵野監督の一言でオリジナルの仮面ライダーを踏襲したものに落ち着くという流れを見せつけられる。

この作業を「無駄」と一刀両断するのか、それとも答えにたどりつくために「必要不可欠だった」と捉えるのか、観る者によって解釈が分かれるだろう。少なくとも筆者の目には、庵野監督が製作過程の端々であえて偶発的な流れを仕掛け、スタッフやキャストの反応を待ち、そこで生まれた何かを画面に刻みつけようとしているように映った。

アクション班が構築してきた殺陣を、「ただの段取りにしか見えない」といってバラシにする。現場で急に撮影場所を変える。そのくせ構図にはこだわり、小道具や役者の配置をミリ単位で修正を加えたりする。こうした傍若無人な振る舞いが祟り、次第に現場で孤立していく庵野秀明。彼が現場で味わっただろう孤独が、仮面ライダーのテーマにも通じると言ったら牽強付会だろうか。

そもそもオリジナルの『仮面ライダー』の制作秘話を聞くと、その現場は常にハプニングだらけだったという。仮面ライダー2号の誕生も、本郷猛を演じていた藤岡弘のケガによって考え出された、間に合わせの産物だった。

当時のスタッフが、アクシデントに対してその場で知恵を絞り、そこに偶然と予想外の結果が重なって『仮面ライダー』という唯一無二の作品が生まれ、いまも続く偉大なタイトルになったのは事実だ。せっかくの実写映画で、生きている俳優たちがいる。だからこそ、庵野監督はナマの感情や現場で起こるハプニングを追求したかったのではないだろうか。

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