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破綻からみえる唯一無二の魅力

森山未來
森山未來Getty Images

ドキュメンタリーでは、仮面ライダー1号、2号とチョウオーグが三つ巴の戦いをするクライマックスシーンの撮影で、庵野監督が当日になって台本に「泥臭い戦い」という表現を加え、「演じる3人の俳優で話し合って決めてくれ」という前代未聞な演出をする場面が映し出される。

段取りを超えた段取り。リアルを超えたリアル。プロレスに精通している人なら、この感覚がわかるのだが、そうした感性を持つ者は、どうやら庵野組にはいなかったようだ。ちなみに、マスクをした状態で怒りや痛みを伝えるというのも、一流のプロレスラーがやっていることだったりするのだが…。

とにかく3人は体を張って、この「泥臭い戦い」を手探りで表現していく。池松壮亮、柄本佑、森山未來という、正統派の美男子ではないけれども、色気と演技力に優れた日本のトップ俳優3人が、「カッコよく映ろう」などという意識から遠く離れて、ひたすら泥臭いアクションに徹するサマは感動的である。

実は、これは映画全体にもいえる。いびつで、破綻している部分もあるのだが、『シン・仮面ライダー』という作品には、泥臭い色気が漂っている。

思い返すと、オリジナルの「仮面ライダー」自体が、そんな何とも言えないカッコ良さで成立していた。デザインだって、よく見ると気味が悪い。でも、なぜだか無性に惹かれてしまう。
逆に言えば、ストーリーが唐突で、アクションが段取りで、トーンがバラバラでも、仮面ライダーが崖の上にスッと立っていればすべてが成立してしまう強さがある。

庵野組は、そんなヒーローに果敢に勝負を挑んだ。勝ち負けではないのかもしれないが、その結果をジャッジするためには、何度も配信視聴してみるしかないだろう。

(文・灸 怜太)

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