漫画史に残る名キャラクターを熱演
死の間際、紫夏は言う。「あなたは、ちゃんと感じていますよ。あの晩、一緒に月の輝きに感動したじゃありませんか」
この言葉を聞き、紫夏と、そして、仲間たちが自分を逃がすために次々と打ち殺されてゆく様を見た嬴政は、激昂し、失っていた感情と感覚を取り戻すのであった。
この悲しい事態を起に、嬴政は戦乱の世を終わらせるべく中華統一を志すことになったのである。はっきり言って、本作におけるMVPは、紫夏を演じた杏である、と言い切ってしまっていいのではないだろうか。
彼女は長編漫画によくありがちな、主要キャラの過去エピソードに取って付けたように出てくる人物ではない。嬴政が感情を取り戻し、中華統一を目指すきっかけになった存在である。
そんな、漫画史に残る名キャラであり、名セリフを完璧に再現した女優・杏。彼女の一挙手一投足を観るだけでも、劇場に足を運ぶ価値はある。
原作の紫夏も、もちろん素晴らしいキャラなのだが、二次元の存在に血を通わせてみせた杏の渾身のパフォーマンスが、映画の質を引き上げていると筆者は感じた。