清水崇監督節炸裂!ホラー監督の巨匠が魅せる恐怖
GENERATIONSのメンバーによる、ホラー映画初挑戦とは思えない堂々とした演技に加え、本作の見どころとなっているのは、名匠・清水崇による恐怖演出だ。
本作では、多くの登場人物に独自の“癖”があり、それが観る者に不気味さをもたらすと同時に、物語の伏線としても機能している。
自分の癖は人に言われても気が付かないことの方が多いが、他人の癖はなぜあんなにも気になり、気が散るのだろう。ペンをかちゃかちゃと音を立てて出し入れする音。指で机や自分の太ももを叩き、トントンとリズムを刻む人。目を必要以上に瞑り、パチパチと瞬きの動きが大きい人。緊張すると急に出始めるしゃっくり。そして不安になると、音が鳴るほどの強さで首をかく人。
ちなみにこの首をかく行為は凛の癖。彼女は終始スーツを身に着け、きちっとした雰囲気を身にまとっているが、首をかく際にクローズアップされる真っ赤なマニキュアはいかにもアンバランス。登場人物の“癖”が執拗に描写され、細かい違和感が積み重ねられることで、作品全体が不穏なムードに包まれる。
さらに、先に述べたとおり、この各キャラクターの癖は、『ミンナのウタ』というタイトルの伏線となっており、それが回収されるクライマックスは、監督の手腕が見事に発揮されている。
さらに、GENERATIONSの楽曲が度々使用されているが、ダンスユニットとしての彼らの楽曲はどれも電子音などを利用したアップテンポの楽曲ばかり。しかしその中でも、ボーカル2人の甘い歌声が耳に心地良く入ってくる。
そんな激しい楽曲が本作では存分に使われている。注目すべきは、劇場で鑑賞することで、迫力のある音響が際立つ一方、無音のシーンの不気味さが引き立つという点だ。爆音と無音が交互に入れ替わることで、怖さが引き立ち、ジリジリと全身に緊張感を走らせる。音楽を駆使した清水崇の演出には思わず舌を巻かざるを得ない。