テーマ曲がヤバい…絶対に映画館で観るべき理由とは？ GENERATIONS総出演、映画『ミンナのウタ』徹底考察＆評価

GENERATIONSのメンバーが本人役でホラー初挑戦！ 映画『ミンナのウタ』監督は日本のホラー映画の巨匠・清水崇。一度聴いたら、頭から離れない不気味なメロディ。それは伝染し、あなたもその世界に取り込まれてしまう…。本格ホラー好きにオススメな理由を深掘り解説する。（文・タナカシカ）【あらすじ キャスト 解説 考察 評価】 GENERATIONS×ホラー界の巨匠・清水崇の超本格ホラー （C）2023「ミンナのウタ」製作委員会 国民的グループ「EXILE」の兄弟ユニットとして、2011年に発足した7人組ダンス&ボーカルグループ「GENERATIONS」。昨年デビュー10周年を迎えた同グループのメンバーがメインキャストを務める本作は、メンバーがそれぞれ本人役を演じるという、実験的な設定が話題を集めている。 出演者は、GENERATIONSのメンバー（白濱亜嵐、片寄涼太、小森隼、佐野玲於、関口メンディー、中務裕太、数原龍友）に加え、探偵・権田役をお笑い芸人のマキタスポーツ、権田に真相解明を依頼するGENERATIONSのマネージャー役を早見あかりが演じている。 メンバー同士のリアルな掛け合いや、本人役を演じリアリティーのある表情を見ることができるため、GENERATIONのファンにとっては垂涎の作品だと言える。 しかし、GENERATIONSのファンだからという軽い気持ちで観に行くと、思わぬ展開に面食らうだろう。なぜなら清水崇が監督しているからだ。 清水崇といえば、『呪怨』シリーズをはじめ、近年には『犬鳴村』（20）、『樹海村』（21）、『牛首村』（22）の〈恐怖の村シリーズ〉の3部作を手掛ける、言わずと知れたJホラーの巨匠。 本作は、GENERATIONSの魅力が堪能できる作品であると同時に、超本格派ホラーに仕上がっている。 【次ページ】 GENERATIONSのメンバーを襲う怪現象とは？ 「わたしのカセットテープ、届きました…？」 GENERATIONSのメンバーを襲う怪奇現象 考察に入る前に、あらすじを見ていこう。 人気ラジオのパーソナリティを務めるGENERATIONSの小森隼は、収録前に倉庫に放置されていた、30年前に送られてきたカセットテープが入ったリスナーからの手紙を見つける。その直後、収録中に「わたしのカセットテープ、届きました…？」という声が聞こえ、その後、小森は突然姿を消してしまう。 大事なライブを控えていたこともあり、公にしたくないマネージャーの凛(早見あかり)は、元刑事の探偵・権田(マキタスポーツ)を雇い、他のメンバーもホテルに一時避難させる。 元刑事とともに聞き取り調査をするが、メンバーは全員、失踪前の小森が「奇妙な鼻歌が頭から離れない」と言っていたと証言。更に、小森以外のメンバーも「奇妙なメロディーが聞こえる」、「少女の幽霊を見る」など、怪現象に悩まされていることが明らかになる。 【次ページ】 恐怖を引き立てる登場人物の“癖” 清水崇監督節炸裂！ホラー監督の巨匠が魅せる恐怖 （C）2023「ミンナのウタ」製作委員会 GENERATIONSのメンバーによる、ホラー映画初挑戦とは思えない堂々とした演技に加え、本作の見どころとなっているのは、名匠・清水崇による恐怖演出だ。 本作では、多くの登場人物に独自の“癖”があり、それが観る者に不気味さをもたらすと同時に、物語の伏線としても機能している。 自分の癖は人に言われても気が付かないことの方が多いが、他人の癖はなぜあんなにも気になり、気が散るのだろう。ペンをかちゃかちゃと音を立てて出し入れする音。指で机や自分の太ももを叩き、トントンとリズムを刻む人。目を必要以上に瞑り、パチパチと瞬きの動きが大きい人。緊張すると急に出始めるしゃっくり。そして不安になると、音が鳴るほどの強さで首をかく人。 ちなみにこの首をかく行為は凛の癖。彼女は終始スーツを身に着け、きちっとした雰囲気を身にまとっているが、首をかく際にクローズアップされる真っ赤なマニキュアはいかにもアンバランス。登場人物の“癖”が執拗に描写され、細かい違和感が積み重ねられることで、作品全体が不穏なムードに包まれる。 さらに、先に述べたとおり、この各キャラクターの癖は、『ミンナのウタ』というタイトルの伏線となっており、それが回収されるクライマックスは、監督の手腕が見事に発揮されている。 さらに、GENERATIONSの楽曲が度々使用されているが、ダンスユニットとしての彼らの楽曲はどれも電子音などを利用したアップテンポの楽曲ばかり。しかしその中でも、ボーカル2人の甘い歌声が耳に心地良く入ってくる。 そんな激しい楽曲が本作では存分に使われている。注目すべきは、劇場で鑑賞することで、迫力のある音響が際立つ一方、無音のシーンの不気味さが引き立つという点だ。爆音と無音が交互に入れ替わることで、怖さが引き立ち、ジリジリと全身に緊張感を走らせる。音楽を駆使した清水崇の演出には思わず舌を巻かざるを得ない。 【次ページ】 清水崇監督による遊び心のあるセルフオマージュ ホラーファン必見！『呪怨』をセルフオマージュ （C）2023「ミンナのウタ」製作委員会 今作で最も恐怖心を植え付けられるシーンは、事件の発端となったカセットテープの送り主である、高谷さなという少女がかつて住んでいた家に行く場面だろう。 30年という長い年月をかけ、廃墟と化した家は、画面越しでも伝わるほど不気味。筆者は思わず体内の血液が逆流するような恐怖を覚え、体が凍りつく体験をした。 また、このシーンでは、清水崇の代表作『呪怨』のオマージュが随所に散りばめられている。 高谷さなと母親は、『呪怨』に登場する伽耶子を思い出さずにはいられない。また、廃墟のシーンでは、これまた『呪怨』シリーズでお馴染みの顔面蒼白の男の子が登場。役名も『呪怨』と同じ“としお”であり、意図的なセルフオマージュであることがわかる。 ちなみに、"としお"の登場シーンは一瞬ではあるが、公式の予告編でもちらっと映るので、気になる人はチェックしてみてほしい。 【次ページ】 メインテーマを手がけたのは唯一出演していないあのメンバー 主題歌「ミンナノウタ」に隠された仕掛けとは？ （C）2023「ミンナのウタ」製作委員会 本レビューの冒頭で、本作はGENERATIONSファンに向けた映画という側面を持ち、全員本人役で出演していると述べたが、実は、1名出演していないメンバーがいる。それは「俳優業はしない」と公言している、メインボーカルの数原龍友だ。 しかし彼は主題歌「ミンナノウタ」を手がけることで、本作に参加している。映画に寄り添うように作られた楽曲は、少し不気味なメロディーと歌詞が特徴的だ。サビでは、音楽が静かになり、歌声だけが強調されるように作られており、あのカセットテープの音声を思い浮かべてしまう。しかし、ボーカル2人の甘い声によって妖しい雰囲気を醸し出し、思わず魅了される。そんな楽曲となっている。 しかしこの楽曲、随所に細かい仕掛けが施された、非常に凝ったものになっているという。メンバーがラジオ番組で語ったところによると、「間奏の部分に奇妙な音が入っており、逆再生するとしっかり聞こえる」、「高谷さなの想いが歌詞に反映されている」らしいのだ。興味のある方は、ぜひ鑑賞後にテーマソングを聴き込んでほしい。 （文・タナカシカ） 【作品情報】 監督: 清水崇 脚本:角田ルミ、清水崇 制作：高橋敏弘、和田佳恵、木下直哉、中林千賀子、井田寛 出演:白濱亜嵐、片寄涼太、数原龍友、関口メンディー、佐野玲於、小森隼、中務裕太、早見あかり、マキタスポーツ、穂紫朋子、天野はな、山川真里果 エグゼクティブプロデューサー：吉田繁暁、浅野太 企画：新垣弘隆、大庭闘志 プロデュース：大庭闘志 プロデューサー：鴨井雄一、石田聡子、柳原雅美 音楽：小林うてな、南方裕里衣 編集：鈴木理 特殊造形・特殊デザイン：百武朋 美術：都築雄二 主題歌：GENERATIONS from EXILE TRIBE 2022|日本|102分|配給:松竹/G （C）2023「ミンナのウタ」製作委員会 公式サイト 【次ページ】 映画『ミンナのウタ』予告編 【最初から読む】映画『ミンナのウタ』徹底考察＆評価 【関連記事】 こんな西畑大吾見たことない…。映画『忌怪島』にみる役者としての新境地を考察＆解説。怖いけどホラー初心者にお勧めの一本 「覆面被ったただの変態じゃん！」ホラー映画『プー あくまのくまさん』はひどい？ 胸クソ描写に込められた深い意味とは？ 「バカにしやがって！」原作者がブチギレた名作映画5選。絶対に許されない改変…。作者に嫌われてしまった不幸な作品をセレクト

ランキング

もし『エヴァンゲリオン』が実写化されたら…？ガチで妄想キャスティング。シンジや綾波レイを演じるのにふさわしい役者は？

映画『ファーストキス』評価＆考察レビュー。なぜ松村北斗の演技は感情移入しやすいのか？凄味を増した芝居の魅力とは？【ネタバレ】

「何度もトライして見つけていく」映画『野生の島のロズ』日本語吹き替え・柄本佑が語る声の芝居の難しさとは？インタビュー

『宙わたる教室』『団地のふたり』と名作を量産するNHKドラマ、最近、より面白くなっているワケ。民放とは異なる強みを解説

10歳未満の少女も...“江戸の色町”吉原と遊女のリアルとは？大河ドラマ『べらぼう』の理解が深まる豆知識を解説

ランキング

もし『エヴァンゲリオン』が実写化されたら…？ ガチで妄想キャスティング。シンジや綾波レイを演じるのにふさわしい役者は？

映画『ファーストキス』評価＆考察レビュー。なぜ松村北斗の演技は感情移入しやすいのか？ 凄味を増した芝居の魅力とは？ 【ネタバレ】

「何度もトライして見つけていく」映画『野生の島のロズ』日本語吹き替え・柄本佑が語る声の芝居の難しさとは？ インタビュー

『宙わたる教室』『団地のふたり』と名作を量産するNHKドラマ、最近、より面白くなっているワケ。民放とは異なる強みを解説

10歳未満の少女も...“江戸の色町”吉原と遊女のリアルとは？ 大河ドラマ『べらぼう』の理解が深まる豆知識を解説

もし『エヴァンゲリオン』が実写化されたら…？ガチで妄想キャスティング。シンジや綾波レイを演じるのにふさわしい役者は？

映画『ファーストキス』評価＆考察レビュー。なぜ松村北斗の演技は感情移入しやすいのか？凄味を増した芝居の魅力とは？【ネタバレ】

「何度もトライして見つけていく」映画『野生の島のロズ』日本語吹き替え・柄本佑が語る声の芝居の難しさとは？インタビュー

10歳未満の少女も...“江戸の色町”吉原と遊女のリアルとは？大河ドラマ『べらぼう』の理解が深まる豆知識を解説