異例の公開戦略!! 宮崎駿監督の新作映画『君たちはどう生きるか』。PRをしない逆マーケティング広告について徹底解説!
宮崎駿監督の新作映画『君たちはどう生きるか』。劇場公開される前、ポスター以外の、内容についての情報が一切解禁されなかったことで、話題を呼んだ。それはスタジオが意図的に行った戦略であり、PRは大成功を収めた。今回は、現地メディア米colliderに基づき、なぜ何も明かさないPRが上手くいったのか、理由を解説していく。
成功した!マーケティングをしないPR戦略
劇場公開前の映画『君たちはどう生きるか』は、予告動画や公式画像など、事前に内容が予測できるような宣伝物は、たった1枚のポスターのみでそれ以外は一切なかった。本作は、その口コミと、スクリーンで宮崎駿の新作を視聴できるという魅力だけで勝負したのだ。
理屈上では、大胆な作戦のように聞こえる。しかし同時に、この特別なプロジェクトにふさわしい作戦でもあった。結局のところ、10年ぶりの宮崎駿監督の新作というだけで、十分な宣伝である。さらに、全ての新作映画に対し、内容が分かってしまうような宣伝は必要はないということを、思い出させてくれる作品でもあった。
ハリウッドのスタジオは、個性的な映画作品に、一般的な予告動画を用意し、作品内容を敢えて誤解させるような描写を作り出すことがある。
ユニバーサル・ピクチャーズなどは、映画『オッペンハイマー』の予告動画に、作品のラストショットを忍ばせる、などといった、映画作品を台無しにする可能性がある予告動画を製作することもある。
視聴者は、近々公開される作品について、その予告動画で多くを知ることで、映画作品の選択に失敗しないという安心感を覚える。そしてスタジオ側は、作品内に登場する挑戦的とも言えるシーンや、奇抜なビジュアルの登場シーンを予告動画内に使用することで、事前にその内容を視聴者に見せ、期待を裏切ることを避けることができる。
しかしその結果、サプライズ要素は消え、映画ファンにとってそれほど衝撃的な作品ではなくなる場合が増えたのだ。
予告動画は、映画作品をサポートし、最高の形で作品の繁栄を促すために存在し、その映画の特徴を削るものではない。
さらに、現代の多くの映画スタジオが、新作大作映画の広告で市場を埋め尽くそうとするやり方は、小規模でも素晴らしい映画作品が注目を集めるのを困難にしてしまう傾向がある。
過去には、2013年4月に、映画『オーシャンズ11』(2001)や、映画『マジック・マイク』(2012)の製作を務めたスティーブン・ソダーバーグ監督は、当時公開された映画『アイアンマン3』が、既に多くの注目を獲得していたにも関わらず、ディズニーが、テレビCMやその他あらゆるマーケティングに法外な金額を費やし、初日の興行収入を可能な限り押し上げようとしていることを鋭く指摘した。
大作映画の公開に対するプレッシャーは増すばかりで、マーケティングの横行は、より避けられなくなっているのが現状だ。