アニメ版のモデルとなった街は聖蹟桜ヶ丘だが…実写版の舞台は?
原作およびアニメ版と実写版との違いはまだまだある。雫の実家は、アニメ版では団地であった。また、モデルとなった街は東京都多摩市の京王線聖蹟桜ヶ丘駅付近であるとされ、アニメで描かれた風景を求めて「聖地めぐり」にいそしむファンも少なくない。
一方、実写版における雫の実家は2階建ての一軒家。アニメでは雫だけの部屋はなく、姉の汐と相部屋であった。しかし、実写版では雫だけの部屋が用意されている。ちなみに、実写版では姉の汐は登場しない。雫と両親との会話によると、どうやら結婚して離れて暮らしているらしい。
そもそも天沢聖司も最初は「イヤな奴」だったではないか
ここまで実写版ならではの魅力を、原作およびアニメ版との違いに着目することでひも解いてきた。しかし、どんなに「実写版とジブリ版は別物だ」と説いたことで、アニメ版の(一部の?)熱心なファンの方々にとって『耳をすませば』の実写映画化は、許しがたい暴挙に思えるかもしれない。理想が高すぎて、いざ現実化されると拒否したくなるのはもっともである。
とはいえ、「理想と現実」のギャップというモチーフは、『耳をすませば』の実写版のみならず、原作、アニメにも通底してみられるものだ。そもそものはじめから、雫にとって「天沢聖司」とは図書カードに書かれた謎の人物であり、彼女にとって理想の王子様のような存在だった。それが実際に会うと「やな奴」であり、「理想と現実」のギャップに一度はしたたかに傷つくも、徐々に現実の天沢聖司の魅力に気づき、ホンモノの恋心を抱くようになるのだった。
原作やアニメ版に恋をした人は、実写版のギャップに困惑するかもしれない。しかし、困惑を乗り越えた先に、実写版ならではの魅力に気づき、ふたたび恋に落ちる瞬間を味わえるかもしれない。あたかも、初恋の相手によく似た人を好きになるように。
【作品情報】
10.14 ROADSHOW 『耳をすませば』
出演:清野菜名 松坂桃李 山田裕貴 内田理央 / 安原琉那 中川翼 荒木飛羽 住友沙来
音尾琢真 松本まりか 中田圭祐 小林隆 森口瑤子 / 田中圭 近藤正臣
原作:柊あおい「耳をすませば」(集英社文庫<コミック版>刊)
監督・脚本:平川雄一朗
音楽:髙見優
主題歌:「翼をください」杏(ソニー・ミュージックレーベルズ)
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント/松竹
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