「推奨できないシーンがあるのも事実です」
『サンクチュアリ』を素直におすすめできないワケ
―――相撲に精通するあかつさんから見て、『サンクチュアリ』は楽しめましたか?
「ドラマ自体、めちゃくちゃ面白かったです。元力士の方が出演されていたのもあり、細かいところもしっかり再現されていて。『あ〜相撲部屋でこういう場面見るな〜』と何度も唸らせられました。
ただですね、私は2年前から地元・福島で子供たちのために相撲道場を始めたのですが、微力ながらも相撲指導に携わる立場からすれば、『サンクチュアリ』に推奨できないシーンがあるのも事実です。理不尽な暴力を描いた場面もありますよね。
相撲協会も業界からあらゆる暴力を一掃しようとしている中、『この作品最高だよ!』と無責任に喧伝してしまっていいのかなという葛藤が正直あります。一昔前の物語として作られているのならよかったんですけど、親方が普通にアイコスを吸っているので(笑)」
―――複雑な思いでドラマをご覧になったのですね。
「大相撲の世界に入ってみたいなと、憧れを抱いている人が見て、『こういう部分があるんだったらやめようかな』って感じることもあるのかなと、ちょっと心配になりました。
一方で、『そんなの関係ねえ!』っていう強い気持ちがないと相撲界でやっていくことは難しいとも思います。だから『サンクチュアリ』に関する私の意見は結構複雑です…」
―――教育に携わっている方からすると、諸手を挙げて推奨できない部分があると。
「でもね、子供たちは結構『サンクチュアリ』の話をしていますよ」
―――そうなんですね! 影響力の強さが伺えます。
「やっぱり相撲に興味がある子はすごく気にしている。でも私からは『見たほうが良いよ』とか『見て気合い入れろ!』という風にはとても言えないです。特に小学生たちには、楽しい相撲を心掛けて一緒に相撲をやっているので」
―――暴力的なシーンとは別で、『サンクチュアリ』では相撲業界のダークサイドも描いていますよね。
「そうですね。記者に脅されて星のやりとり(八百長)を持ちかけられるシーンもありましたね。まあ、あの場面に関しては、主人公は誘いを断るのですが…。そういう嘘か本当かわからない描写もあるので、僕は子供にはオススメできないですね」
―――相撲の上下関係の描かれ方についてなのですが、第1話で先輩が用を足した後に、後輩に「(ケツを)拭けよ」と命じるシーンがありました。巨体を誇るお相撲さんならではの描写だと思うのですが、そうしたことは実際にあるのでしょうか?
「私も小さい頃、そうした話を聞いたことはあります。でも、実際に相撲部屋に行かせていただく中で、一度も見聞きしたことはないです」