今泉監督が明かす作『アンダーカレント』キャスティング秘話とは?
真木よう子主演の映画『アンダーカレント』(10 月 6 日公開)の公開を記念して、10月5日までYEBISUGARDENCINEMAで開催中の今泉力哉監督作品リバイバル上映。9月23日には『愛がなんだ』(2019 年)リバイバル上映後に今泉力哉監督が登壇し、今泉力哉映画祭り(通称:RIFF)トークイベントを実施した。
自身の名を一躍知らしめた『愛がなんだ』について今泉監督は「潤沢な予算や撮影日数があったわけではなかったけれど、キャスティングを含めて理想的人材が集まって、想像以上の人に観てもらえた作品にもなった。ヒットし
た時は喜び以上に、これで自分の過去作品も観てもらえるぞと思った」と回想。司会を務めたライターの門間雄介も「それまで撮ってきた今泉映画の完成形が『愛がなんだ』なのだと思う」と評していた。
SNSで「#今泉推し映画」を募集したところ、『街の上で』(2001年)が推し映画第 1位になった。本作の主演で、かつ今泉映画に多数出演している若葉竜也の魅力について聞かれた今泉監督は「ほかの人とは別格で、俳優としての能力値が飛びぬけている。
キャラクターの捉え方の層がほかの人とは違っていて、自分の想像の2個ぐらい上でくる」と絶賛し「ほかの俳優に『彼くらいできるだろう』と求めてしまうけれど、そんな人はいない。これは若葉に出会った功罪の一つだと思う」とジョークを交えつつも、若葉の飛びぬけたセンスに舌を巻いていた。
漫画家・豊田徹也氏による伝説的長編コミックを実写映画化した『アンダーカレント』をすでに鑑賞した門間は「これまでの今泉さんらしい恋愛劇とはまるで違う。軽やかで瑞々しい恋愛映画のイメージとは正反対で、重くて影があり、陰の部分を深く突き詰めている素晴らしい作品」と賞嘆。
今泉監督は「原作漫画があまりにも素晴らしいので、どのように映画化するべきか悩んだ。いつどこでどのシーンの本直しをしたのか明確に覚えているくらい、絶対に面白くしたいと思った。群像劇的な作品だけれど、人が人と向き合うことを描いている映画。自分の作品でいうと『退屈な日々にさようならを』(2017 年)とある種の類似がある」と自己分析した。
主演の真木よう子とは初タッグ。今泉監督は「細かい話をして衝突したこともあるけれど、とても面白かった。真木さんは器用ではないし、役にのめりこんでいくタイプ」と評し「真木さんをどう演出するか考えたのと同時に、真木さんと対峙する人をどう演出するべきか考えた。真木さんが追い込まれていく役であることは見えていたので、キャスティングについても事前に真木さんに相談。真木さんのことを助けてくれそうな、真木さんと昔からの関係がある人を中心に固めた」とキャスティング秘話を口にしていた。
また今泉監督は、自身の演出術についても言及。「常に意識しているのは、演出せず否定もしないということ。その役者さんを魅力的だと思ってキャスティングしたわけだから、その役者のアイデアを閉ざすことなく開く場を作る。撮影でもまずは役者本人から出るアイデアをやってもらう。それが自分のイメージと大きくずれていない限り、そのままやってもらう。もし自分とイメージが違っていた場合、なぜそうなるのか理由を聞いて、それが自分よりも脚本を理解してのものだったら否定はしない」。
オリジナルではない、原作のある作品を作る際は「ファーストシーンとラストシーンは大事。原作がどんなに素晴らしいラストであっても、原作とそのまま同じように終わることはなく何かを足す。ラストは区切りでしかなく、映画を観た観客がその後も物語が続いていると思ってくれるよう気を配っている」とこだわりを口にしていた。
【ストーリー】
家業の銭湯を継ぎ、夫の悟とともに順風満帆な日々を送るかなえ。しかし突然、悟が失踪する。途方に暮れていたかなえだったが、なんとか一時休業していた銭湯を再開させる。数日後、堀と名乗る謎の男が、銭湯組合の紹介を通じて「働きたい」とやって来る。
その日から、住み込みで働くことになった堀とかなえの不思議な共同生活が始まる。友人・菅野から紹介された胡散臭い探偵・山崎とともに期間限定で悟を捜しはじめたかなえは、悟の知られざる事実を次々と知ることに。
それでも、堀と過ごす心地よい時間の中で、穏やかな日常を取り戻しつつあったかなえ。だが、あることをきっかけに、悟、堀、そして、かなえ自身も閉ざしていた、心の奥底に沈めていた想いが、徐々に浮かび上がってくる。
それぞれの心の底流(アンダーカレント)が交じりあったその先に訪れるものとはー。
【作品情報】
出演:真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太、江口のりこ、中村久美、康すおん、内田理央
監督:今泉力哉『愛がなんだ』『ちひろさん』
音楽:細野晴臣『万引き家族』『メゾン・ド・ヒミコ』
脚本:澤井香織『愛がなんだ』『ちひろさん』、今泉力哉
原作:豊田徹也『アンダーカレント』(講談社「アフタヌーン KC」刊)
製作幹事:ジョーカーフィルムズ、朝日新聞社
企画・製作プロダクション:ジョーカーフィルムズ
配給:KADOKAWA
コピーライト:Ⓒ豊田徹也/講談社 Ⓒ2023「アンダーカレント」製作委員会
公式 HP:https://undercurrent-movie.com
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