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「映画館と映画自体の持つ力を試したい」映画『愚鈍の微笑』宇賀那健一監督、単独インタビュー

text by ZAKKY

田辺桃子、小出薫、森田想が出演する、反戦をテーマに描いたファンタジー映画『愚鈍の微笑み』が公開中だ。メガホンをとったのは、『サラバ静寂』『Love Will Tear UsApart』で知られ、国内外で注目を集める宇賀那健一監督。今回は同監督のインタビューをお届け。本作の製作秘話をたっぷり伺った。(取材・文:ZAKKY)

「タル・ベーラに影響を受けた」
戦時下の日常というテーマの着想源

Ⓒ春巻号
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―――今作の、着想の原点についてお聞きしたいです。

「最近の僕の中にある一つのテーマが、降りかかる不条理に対してどう生きるかということなんです。昨年公開作品だと『異物-完全版』、来年公開作品だと『悪魔がはらわたでいけにえで私』という映画もそうです。

その中で本作は、戦争という不条理について描きました。僕自身、それほど自分の外にあるニュースに対して、すごく敏感な方では決してないのですが、去年の2月からのロシアのウクライナへの進行の時は、すごくショックを受けてしまって。 戦争も、自分らに起こってもおかしくない状況なんだなと改めて気づかされた部分がありまして」

―――なるほど。

「そんなタイミングで、今作の、戦下の元で楽しく生きている女性3人という、テーマが思い浮かんだんです。

僕はタル・ベーラ監督の『サタンタンゴ』という作品が映画の中で一番好きなんですが、分かりやすく何かが動くわけでないけど、対象人物をずっと捉えて、観客に画に集中させるような映画というのをいつか撮りたいなとずっと思っていたんです。

で、それと同時に、全く別のベクトルで、『ウィーアーリトルゾンビーズ』や『そうして私たちはプールに金魚を、』の長久允監督作品のように今を生きる登場人物たちが、だらだら話しているのだけれど、その中に社会における真実が隠されている、といったような映画もいつか撮りたいなとずっと思っていたので、いつかやりたいと思った、だけど全然テイストの違う両監督の作品の匂いみたいなものを混ぜられたら面白いんじゃないかと思ったんです」

―――宇賀那さんはこれまでも、他の監督が撮った作品の影響をダイレクトに公言するところが、素敵だなと思います。

「まあ、事実ですから、そこは素直にですかね(笑)」

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