「いつかがっつりやろうね」
田辺桃子との約束
―――そのバランスは確かに見事でした。
「今まで、効果音でいろんなことを足していることが常だったんですよ 。『サラバ静寂』では前半は鳥の音を全て消したり、一つのシーンで風の音を10くらい足したり、『異物』では音数を減らして特定の音を強調する且つ モノラルと5.1chを混在させるなど、今までの作品では効果音でいろんなことをやってきました。
でも、今作はあえてそういう細工はほとんどしませんでした。最後の10分間位は色々と他の音が入ってくるんですけど、それ以外は基本的にそれほど難しいことをしていませんね。ある意味僕にとって
は新たな挑戦でした」
―――ロケ地はどちらだったのですか?
「群馬県の伊香保の辺りですね。『乾いた鉢』でも使った場所で、気に入っています」
―――女性陣三者三様のキャラが立っているのも、印象的でした。
「すごく嬉しいですね。マナは、一番僕の中で自分のスタンスがしっかりしていて、同時にとても繊細な子なんだろうなって思っていますね。
マナ役の田辺桃子さんは、もともと『転がるビー玉』と『異物-完全版』に出てもらっていて、めちゃくちゃお芝居が素晴らしいのは十二分に分かっていたので、その時に、次はがっつりやろうねという話をしていて、今回、この難しい話、難しい役を誰よりも安心してお願いできるのは田辺さんだなと思って、オファーしました。
ナナミ役の小出薫さんは、『異物-完全版-』や『Love Will Tear Us Apart』に出演してもらっているのですが、彼女は感情を爆発させる演技が、非常に上手い。一瞬で感情を高いところまで持って行ける演技ができる人ですね。
そして、ユカ役の森田想さんですが、過去に彼女が出演している作品は何本も見ていて、ずっとご一緒したいなと思っていまして、ついに実現しました。
彼女は、他の監督とも話して、完全に意見が一致したんですけど、現場でも本当に素晴らしいのですが、いざ編集する段階になって、彼女の凄さがさらにわかるんです。各シーンのリズムを作れる役者なんですよ。それがしかも、多分、計算ではなく、ナチュラルに自分の中のテンポを生み出していて。だから、彼女の動きが全部、編集点になるんですよ。どういうことなのか僕にも分かりません(笑)。ただ、本当にすごいことです」