偶然か必然か、「たまたま」という運命
それでは、変身モノの大先輩としてよく比較材料に上がるセーラームーンとの違いは何なのだろうか。世代こそ異なるが、どちらも主に中学生の女の子が不思議な力で変身して敵と戦う、変身モノの代名詞的存在である。
これに答える前に、まず大前提として、両者に優劣は一切なく、それぞれとても素晴らしい作品であることを断らせていただく。そのうえでプリキュアとの違いを言うとすれば「誰でもなれる再現性」である。
セーラームーンは、物語の設定上、登場人物は前世からの繋がりが理由で変身している。王国のプリンセスと、彼女を守護する人々が中心となっているのだ。魂の因縁や使命の比重が高い。そしてその設定だからこそのストーリーの壮大さ、深み、ロマンチックさが魅力である。
一方で、プリキュアの場合は、敵が現れて地球がピンチになった時に、たまたま同じ空間や同じ時間に居合わせて、たまたまプリキュアにふさわしい心を持っていた登場人物が、たまたま変身させることができる妖精と遭遇したから変身した、というパターンがほとんどである。
もちろん総勢78人もいるので、その中には異世界のプリンセスであるプリキュアもいるのだが、その変身理由にしても「プリンセスだから変身できた」というよりは「プリキュアの資質を持つ人だから変身できて、結果的にその人の肩書がプリンセスだった」というニュアンスの方が近い。
つまり、変身条件に社会的地位や出自といった要素がなく、その人の心の在り方に重点が置かれているのである。