初代『ゴジラ』の背景にある「第五福竜丸事件」
核への不安が日本の怪獣映画にインスピレーションを与えたことはよく知られている。しかし、日本人のトラウマは、太平洋戦争中の原爆投下だけではない。
例えば、『ゴジラ』は、アメリカが1946年から1962年にかけてマーシャル諸島で行っていた太平洋核実験、
この実験に使われた火薬量は、TNT換算で約15メガトンで、第二次世界大戦中に投下された原爆の約1000倍。その威力は当時のアメリカ人の予想を大きく上回るもので、火球の直径は4.5マイル(約7.24キロメートル)に達し、250マイル(約402キロメートル)先でも見ることができたという。
悪名高いこの実験だが、とりわけ日本人に衝撃を与えたのは放射線による被害だった。当時、爆発時に予想された危険区域から14マイル(約22キロの位置には漁船が浮かんでいた。乗組員は全員被曝し、乗組員の1人は数ヵ月後に死亡している。
アメリカは当初この事実を否定したが、最終的に汚染地域の拡大を認め、賠償金の一部として日本政府に1500万ドル(約22億7,000万円)を支払った。しかし、事故の証拠が出そろった頃には、既にかなりの量の汚染魚が日本の市場に出回ってしまっていた。
この「第五福竜丸事件」は、日本人に戦争が終結しても核の悪夢が終わらないことを示した。アメリカ人の若者の大半は、こういった歴史を知らない。