時が経つにつれ再評価された『ゴジラ』
日本版の『ゴジラ』(1954)は、2004年に50周年記念として公開されるまで、アメリカでは長らく未公開だった。
また、1954年当時は、日本の批評家でさえ本作に懐疑的で、日本のトラウマを悪用している作品だと非難する者もいた。しかし、時が経つにつれて、世界中の批評家たちは、映画『ゴジラ』(1954)を、脆弱な時代や場所で生きていく現実を素直に表現した傑作と評価するようになった。
そして、本作を皮切りに、世界中でさまざまなゴジラ映画が制作されはじめる。
2016年に公開された『シン・ゴジラ』は、怪獣映画というより、スタンリー・キューブリック監督『博士の異常な愛情』(1964)のようなテイストの作品だ。政府への皮肉を込めたセリフや外国勢力の介入と、官僚主義的で保守的な日本政府への批判が全編に散りばめられた作品になっている。
同作は、国内で見事な復活劇として評価され、作品賞を含む日本アカデミー賞7部門を受賞。英語字幕版は当初、アメリカとカナダで440のスクリーンで1週間限定で劇場公開されたが、好評につき1週間延長されている。
また、アメリカで2014年に制作されたレジェンダリー・ピクチャーズ版の『GODZILLA ゴジラ』(2014)は、1954年版のリブート版であり、監督のギャレス・エドワーズは、核への恐怖という1954年版のテーマを見事に踏襲している。
しかし、核実験の描き方には疑問が残る。例えば、作中では芹沢伊知郎博士(渡辺謙)が、1950年代の核実験はゴジラの粛清を目的としていたと説明するが、このセリフはアメリカによる核実験の歴史を都合よく解釈したもので、不誠実もいいところだ。
近年、アメリカ国内では、海外の作品や正確な歴史認識に配慮した作品の人気が高まっている。そのため、近いうち、日米のゴジラ・フランチャイズ・シリーズ・シリーズの融合がお目にかかれることだろう。あるいは、Apple TV+で配信中の新作ドラマ『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』(2023)こそがその融合の新しい形なのかもしれない。
映画『ゴジラ−1.0』(2023)の公開により、本作に込められた本質的なメッセージが世界に広まることを切に願っている。
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