「考え方が異なる人間同士が理解し合う」
デビュー作から一貫するテーマについて
――― 本作は、惑星Xの難民が地球に到来してくるといったSF的な枠組みを用いつつ、現実的な問題、他なる民族といかに関わっていくのかというアクチュアルな問題も同時に描かれています。これは原作にもある要素です。熊澤監督は、以前、韓国人留学生を描いた『ジンクス!!!』(2013)を監督されています。異なる価値観の人々がいかにして共存するかというテーマは監督にとって重要なものなのでしょうか?
「それは凄く僕の中で興味があるというか、常にやってみたい題材の一つですね。考え方が異なる人間同士が理解し合う。
もちろん、他者と100%分かり合うことは不可能に近いけれども、『ここは理解出来るかもしれない』っていう歩み寄りの作業を細かく積んでいかないと人間に未来はないと思うんですよね。
異文化のすべてを理解することはできないけれど、共感できる部分を努力してちょっとずつ増やしていく。そうしたテーマは、沖縄の竹富島を舞台にしたデビュー作(『ニライカナイからの手紙』/2005年)からありますね」
―――デビュー作ともつながるわけですね。
「沖縄って本州のことを内地って呼びますけど、琉球文化には内地とは異なる独自性がある。そういう意味では、異なる価値観を持つ他者との共存というテーマを描く上で、日本の中でもわかりやすいエリアだと思います。
また、ご指摘の『ジンクス!!!』も日本と全く違う文化の人たちとどのようにしてコミュニケーションを取っていくかというお話です。そうしたテーマは、今回の映画にも内在していますよね」
―――主演の上野樹里さんとは『虹の女神虹の女神 Rainbow Song』(2006)以来17年ぶり、林遣都さんとは『ダイブ!!』(2008)以来15年ぶりの顔合わせとなりました。久しぶりにお二人と映画を作ることになったわけですが、お二人の役者としての成長ぶりをどのように感じられましたか?
「成長ぶりは凄いですよ。お二人とも当時から魅力的で、絶対大成するだろうなって思っていましたけど、本当に尊敬できる大人になりましたよね。
上野樹里ちゃんに関して言うと、僕の中では、『あの頃から変わってないな』って思える瞬間も多かった気がします。
上野さんの魅力、本質って、周囲の価値観に流されないところだと思っていて。自分で感じて、考えて物事を決められる人なので、その芯の強さみたいなのは昔から変わってないなって思いました」
―――今回、上野さんが演じられた良子は、そうした芯の強さが如実に伝わる役でした。
「今回、上野さんにやってもらいたかったのは、価値観とか考え方において、自分で納得して「これがいいって」判断できる、ぶれない人として居て欲しいということでした。
いざ現場に入ると、お芝居の説得力、リアリティがとにかく凄い。『虹の女神』の時、彼女はまだ20歳。今回、36歳になった上野さんを撮らせていただいて、『とても良い大人になったなぁ』って思いました(笑)」