「咲のモデルは監督ですよね」
伊藤万理華からかけられた言葉
―――蓮佛さん演じる梨枝はイライラするとヒールで足踏みをし、伊藤万理華さん演じる咲は自分の髪の毛をかきむしる癖がありますね。こうした細かい動きは、監督が演出を付けられたのでしょうか?
「ヒール鳴らすのは蓮佛さんのアイデアですね。急にやり出したのがとても面白くて、採用しました。
伊藤さんのほうも、僕が『ここで頭を掻きむしってくれ』って言ったわけじゃなくて、自発的に動きを作ってくださいました。
2人は恐らく同じ穴の狢ではあるけど、真逆のキャラクター。どこか似ているんだけれども、真逆のタイプに見せなければいけないので、2人が同時にイライラしているシーンでも、それぞれの怒りの表出方法を分ける必要がある。
お2人とも多分それを理解してくださっていて、ちゃんとそれぞれ異なる動きを作ってきてくださいました」
―――キャラクターの造形に関して、蓮佛さん、伊藤さんお2人とディスカッションする機会があったのでしょう?
「キャラクターについて話し合ったりはしていないのですけど、雑談の中で、『どんな子供だった?』みたいな話を伊藤さんとはしました。
また、『咲には僕のパーソナリティを反映している』ってことを僕が口走っちゃったので、伊藤さんも『咲のモデルは監督』と思って演じてくれてたみたいです。
伊藤さんは作り手にも興味がある方で、クリエイティブな力が凄いんです。それは蓮佛さんにも通じる部分であって、彼女とも同じような話をする機会があったんですが、今回、僕からキャラクターについてお2人に『こうしてください』って言ったことは一つもありません」
―――お2人ともクリエイティブな資質を持っていらっしゃるということもあって、有働監督とのふとした雑談の中から、役作りのヒントを得ていたのかもしれませんね。
「おそらくそうだと思います。もちろん、役者さんから『この役どうしたらいいですか?』って聞かれたら答えますけどね。
とはいえ、こちらの説明を聞かずとも、自発的にアイデアを出してくださる方とご一緒した時のほうが、結果的に『俺じゃ思いつかなかった』っていうキャラクターを体現してくださることのほうが多いです。
今回は、お2人の共演が素晴らしかったのはもちろんのこと、他のキャストに関しても、ほぼ完璧だったと思っています。手前味噌ですけど、今回は“全キャストが良かった”っていう珍しい経験をさせてもらいました」