アラサー崖っぷち女優演じた
蓮佛美沙子の透明度
崖っぷちの女優・梨枝を演じた蓮佛美沙子の芝居は、とても清々しいものだった。受け入れたくない現状への苛立ちが次第に溶け出し、徐々に威厳を取り戻していく。
自分を認めることとプライドを捨てることは誰にとっても難しい。しかも、10代や20代前半ではなく、梨枝は周囲がある程度自分の立ち位置を見つけ始めるアラサー世代だ。人生を諦めるにはまだ早いが決して若くはない、そのヒリヒリとした感情を、透明度高く表現していた。先述した「一世一代の“演技”」では、自身の役割を全うする梨枝の凛とした表情に圧倒されるはずだ。
夢や目標をもつのは素敵なことだ。でも、時にそれが足枷になってしまったり、見たくない現実を突き付けられたりすることもある。ある程度の経験を積んできたから、そのへんの酸いも甘いも、一通り味わってきた。それでも、もう1度がんばってみよう。『女優は泣かない』は、そんなことを思う人にとっての栄養剤みたいな映画だ。