ホーム » 投稿 » 日本映画 » 劇場公開作品 » 天才画家・詩人の村山槐多が蘇る! 映画『火だるま槐多よ』東雅夫ら推薦コメント&主演・佐藤里穂オフィシャルインタビュー解禁

天才画家・詩人の村山槐多が蘇る! 映画『火だるま槐多よ』東雅夫ら推薦コメント&主演・佐藤里穂オフィシャルインタビュー解禁

text by 編集部

22歳で夭逝した画家であり詩人の村山槐多の作品に魅了された現代の若者たちが、彼の作品を独自の解釈で再生させた、革新的な映画『火だるま槐多よ』。今回は公開に先駆け、文芸評論家の東雅夫、映画研究者のローランド・ドメーニグ、映画研究家のアレックス・ツァールテンによるコメント、主演・佐藤里穂のオフィシャルインタビューを解禁する

「時代の突破を試みるアヴァンギャルド・エンタテインメント」
槐多の摩訶不思議な世界を再現

映画『火だるま槐多よ』
©2023 Stance Company Shibuya Production

“ピンク四天王”と称される佐藤寿保監督が、槐多の感性に感銘を受け、「現代人の眠っている潜在意識を呼び起こし感応させるのだ!!」と決意し、製作された本作。

W主演の槌宮朔役には、『佐々木、イン、マイマイン』などの遊屋慎太郎、法月薊役には『背中』で映画初主演を飾った佐藤里穂を抜擢。

12月23日の公開を前に、東雅夫らの推薦コメント、主演・佐藤里穂のオフィシャルインタビュー解禁する!

映画『火だるま槐多よ』
©2023 Stance Company Shibuya Production

【東雅夫(文芸評論家)】

凄い映画を観てしまった。
「時代の突破を試みるアヴァンギャルド・エンタテインメント」と名づけられているが、決して、かつての前衛映画作品ではない。
登場人物は「槐多」に取り憑かれた男と女、そしてこの早世した詩人に関心を抱く四人の若者たち。
佐野史郎の怪演で異彩を放つ。
現代の浪漫の端々に丹念に埋め込まれる、槐多の絵と詩と……デスマスク!
機会があれば是非、御一見をお勧めしておきたい。槐多フリークの貴殿は、特に!百年前に生き急いだ詩人画家が求めていたモノを知るためにも。

【ローランド・ドメーニグ(映画研究者)】

1980年に2作目の8ミリ映画『明日なき欲望』を撮ったとき、佐藤寿保監督は、画家・詩人の村山槐多が 1919年にスペイン風邪による結核性肺炎で夭折したときとほぼ同じ年齢だった。
『明日なき欲望』は、苦悩、退廃、挫折に満ちた村山槐多の生涯にふさわしい標語でもあるだろう。
再び猛威を振るったパンデミックの末、日本映画界の異端児が、ソウルメイトである日本美術界の異端児槐多について映画を撮った。
槐多探しに旅立つ今の若者たちは、欲望を満たす明日があるだろうか?

【アレックス・ツァールテン(映画研究家)】

佐藤寿保の傑作がこのような映画になるとは思いませんでした。
しかし同時に佐藤コスモロジーの総括でもある。
芸術と生命との関係はなんなのか? 深く傷付いた人はどう生きればいいのか?
宮崎駿の『君たちはどう生きるか』の現在向け成人系地獄版。

映画『火だるま槐多よ』
©2023 Stance Company Shibuya Production

【佐藤里穂オフィシャルインタビュー】

──どのような人物だと思って法月薊を演じられましたか?

この人は一体何をしたい人なのかが謎で、何故こんなにも村山槐多に囚われているのか、いつから街を浮遊しているのか。脚本からだけではわからなかったところは、寿保さんからバックボーンを教わったり、ヒントのピースを集めながら形作っていきました。

法月薊は自分の欲望に忠実な人で、自分の居場所を作ることもできない根無し草。脚本に書かれていた「クラゲのように浮遊する」という言葉を意識しながら演じました。

──撮影中の佐藤寿保監督の印象は?

撮影中は、もはや寿保さん自身が村山槐多なのではないか?という感覚がありました。スクランブル交差点での撮影では「薊の花のように鋭くだ!鋭くだぞお!」と激しく言われ、こちらの迷いを一気に払拭してくれました。その時の寿保さんの熱量を目の当たりにし、どこまでも鋭くいかなければ!と覚悟が決まりました。

寿保さんは普段はニコニコした笑顔で私たちに気を配ってくれますが、いざ現場に入ると目の色が変わり全身の毛が逆立っているような印象で、いい意味で動物的感性が鋭い方だと思います。カットを重ねるというより、最初の衝動を大切にする方なので、自分自身もそれを逃さないように普段以上に集中して演じていたと思います。

──佐野史郎さんとの初共演はいかがでしたか?

カメラが回っていないときは、まるでお父さんのような穏やかな雰囲気を感じましたが、カメラの前でいざ対峙すると、圧力というのか、あの度量の深さに怯えるというか…。すべてを受け止めてくれる大きさがあって、それに負けてはいけないと抗おうと思うけれど、向き合うと本当に怖くて…。

役に没頭しているように見えるけれど冷静で全体を把握しているような、相反する二つが同居している凄まじい役者さんだと思いました。

──富士の樹海にある洞窟も幻想的な雰囲気たっぷりでした

セットではない、実際の洞窟でのロケは貴重な経験になりました。森の中にある入り口から下に降りていくと、地面に洞穴のような空洞があり、そこに大きなスクリーンが設置されていました。

洞窟の中の音の響き方が独特で、雫が落ちてきたり、洞窟特有の湿度も体にまとわりついてきたり、閉鎖的空間。まさに“穴倉”!でとても興味深かったです。

──その洞窟内で行われる、遊屋慎太郎さんとの血まみれ全裸抱擁シーンも見どころです

当初の狙いとしては遊屋さんの額のあたりに上から血のりが落ちてくるという予定で、私もそのつもりで顔を上げていたら、その私の顔面に大量の血のりが直撃。目や鼻、口に全部入って来て「ヤバッ!」とは思いましたが、こうなったら死に物狂いで遊屋さんに絡みつくしかないと(笑)。

演技に没頭しすぎて途中で頭の中でプツン!という音がして、「これ以上やったら噛み殺しそう!」と思った瞬間にカットがかかりました。身も心も熱くなってきてしまい、あれ以上やっていたら危険だったと思います。

──劇中劇『悪魔の舌』はどのように演じられましたか?

原作小説を実際に読んで、九段下の話だったので夜の九段下に実際に行ってイメージを膨らませて撮影に臨みました。オーディションの時点で寿保さんから舌の長さを褒めていただき、舌を口から出し入れしてほしいという指示がありました。

ただトゲトゲの舌は本物の舌にかぶせる形の作り物の舌なので、扱い方が難しかったです。少し動かしただけでペロンと飛び出してしまうそうで、いかにおどろおどろしく動かせるか工夫しました。

口に含んだ血のりは、そのままだと苦すぎるということで美術さんがハチミツを混ぜてくれましたが、作り物の舌のゴムの味と混ざってしまって…。悪魔の舌の味は言葉では言い表せないような不思議なテイストでした(笑)。

──観客に向けてメッセージをお願いします

この作品は、村山槐多というかつて実在した異才からインスパイアされて生まれた物語で、ストーリーを追って観るのではなく、絵画や詩を鑑賞するような気持ちで感じてほしいです。美しいでも気持ちが悪いでもいい、観客の方々を突き動かすようなエモーションに繋がったら嬉しいです。

寿保さん独自の画も綺麗ですし、壮大な物語でもあるので、是非ともスクリーンで観てもらいたいです。すべてがカオスになっていくクライマックスが私は大好きなので、そのグチャグチャ感を体感してもらいたいです。

(取材・文・構成/石井隼人)

【予告編】

映画『火だるま槐多よ』は12月23日(土)〜1月12日(金)
新宿 Kʼs Cinemaにて公開他全国順次公開

映画『火だるま槐多よ』
©2023 Stance Company Shibuya Production

【村山槐多(むらやま・かいた)プロフィール】

1896 – 1919。大正時代の日本の画家で、詩人、作家でもある。
従兄の山本鼎(画家)に感化され画家を志し、中学生(旧制)の頃より美術、文学に異彩を発揮。ガランス(深紅色)を多用した独特の生命力に溢れた絵画は、二科展、日本美術院展などに入選し、異色作家として注目されたが、破滅的な放浪生活の末、流行性感冒で1919年2月20日死去。
主要作に、絵画「カンナと少女」「湖水と女」「尿する裸僧」、詩集「槐多の歌へる」(遺稿集)、小説「悪魔の舌」など。

【あらすじ】

大正時代の画家・村山槐多の「尿する裸僧」という絵画に魅入られた法月薊(のりづき・あざみ)が、街頭で道行く人々に「村山槐多を知っていますか?」とインタビューしていると、「私がカイタだ」と答える謎の男に出会う。

その男、槌宮朔(つちみや・さく)は、特殊な音域を聴き取る力があり、ある日、過去から村山槐多が語り掛ける声を聴き、度重なる槐多の声に神経を侵食された彼は、自らが槐多だと思いこむようになっていたのだった。

朔が加工する音は、朔と同様に特殊な能力を持つ者にしか聴きとれないものだが、それぞれ予知能力、透視能力、念写能力、念動力を有する若者4人のパフォーマンス集団がそれに感応。

彼らは、その能力ゆえに家族や世間から異分子扱いされ、ある研究施で“普通”に近づくよう実験台にされていたが、施設を脱走して、街頭でパフォーマンスを繰り広げていた。

研究所の職員である亜納芯(あのう・しん)は、彼らの一部始終を観察していた。朔がノイズを発信する改造車を作った廃車工場の男・式部鋭(しきぶ・さとし)は、自分を実験材料にした父親を殺そうとした朔の怒りを閉じ込めるために朔のデスマスクを作っていた。

薊は、それは何故か村山槐多に似ていたと知り…

遊屋慎太郎、佐藤里穂、工藤景、涼田麗乃、八田拳、佐月絵美、佐野史郎
監督:佐藤寿保 脚本:夢野史郎 音楽:SATOL aka BeatLive、田所大輔 撮影:御木茂則
照明:高原博紀 録音:丹雄二 美術:齋藤卓、竹内悦子 特殊造形・特殊メイク:松井祐一、土肥良成
衣装:佐倉萌 ヘアメイク:佐々木ゆう 編集:鵜飼邦彦 VFX スーパーバイザー:立石勝
カラーグレーディング:廣瀬亮一 題字:赤松陽構造 ドキュメント撮影・スチール:諸沢利彦
助監督:伊藤一平 特別協力:窪島誠一郎 特別美術監修:村松和明
プロデューサー:坂口一直、小林良二、村岡伸一郎
制作プロダクション:コンチネンタルサーカスピクチャーズ 配給:渋谷プロダクション
製作:スタンス・カンパニー、渋谷プロダクション 東京工芸大学芸術学部協力作品
助成: 文化庁「ARTS for the future!2」補助対象事業

2023/日本/カラー/5.1ch/1:1.85/102 分
©2023 Stance Company / Shibuya Production
公式サイト
公式X(旧 Twitter)
公式Facebook

【関連記事】
“ピンク四天王”佐藤寿保監督最新作『火だるま槐多よ』主演・遊屋慎太郎のオフィシャルインタビュー解禁!
原作を大胆アレンジ…日本社会に向けたメッセージとは? 映画『隣人X -疑惑の彼女-』徹底考察&評価。忖度なしガチレビュー
世界に最も影響を与えた日本映画は…? 海外映画の元ネタになった偉大なる邦画5選。誰もが認める歴史的名作をセレクト

error: Content is protected !!