「石橋さんの愛を感じました」
石橋監督の現場だからこそ実現した自然体の演技
―――唐田さんは、自身に当て書きされた脚本をお読みになった時、どのような感想を持ちましたか?
唐田「傍目からは取り立てて大きい出来事が起きているように見えないけれども、希の内面では凄く大きいことが起きていると思いました。例えば、壊れたカーテンレールが最後に直るところとか、凄く丁寧に物語が進んでいくなって。脚本から石橋さんの愛を感じました」
石橋「嬉しいです」
―――本作では、食事をしたり、目覚まし時計の音で起床したり、唐田さん演じる希の日常動作が丹念に描かれていますね。希が椅子に胡座をかいて座るのはどなたのアイデアでしょうか?
石橋「唐田さんご本人です(笑)」
唐田「自然に座っていましたね」
石橋「違和感があったら、『こういう風にしたらどうでしょう』って指摘したと思うんですけど、『面白いな』と思ってそのまま採用しました(笑)」
―――テストの段階から自然におやりになっていたのですね。
唐田「テストからやっていたのかな」
石橋「テストからですね。それと希は一人暮らしで。食べる前に『いただきます』って言ってますが、これも事前に相談しつつ、テストでやってみてもらって、結果すごくしっくりきたので採用することにしました」
―――唐田さんのアイデアが随所に入っているのですね。胡坐をかくアクションは自然に出てきたのでしょうか?
唐田「そうですね。私自身が普段、どちらかというと大雑把なタイプなので。もちろん役の性格を踏まえつつ、石橋さんの作品でこの空気感だったらやってもいいかなって」
石橋「今回、唐田さんからご提案いただいたアイデアは大体採用しました。特にご指摘の場面は、クランクインして1日目とか2日目あたり、かなり序盤の撮影だったんですけど、思い描いていた希のイメージそのものだったので、ハッとしました」
唐田「嬉しいです」
―――プレス資料のインタビューで、『希をただの良い子、あるいは可哀想な子として描きたくなかった』という石橋監督の言葉が印象的でした。たとえば、コンビニ弁当を食べるシーンでは、希の割り箸を割る身振りすらどこか楽し気で…。
唐田「すごく細かく観てくださりありがとうございます」
―――さりげない身振り一つで希が目の前の出来事をちゃんと享受しているのがよく伝わる。一人きりでもまったく悲壮感がなくてとても良いシーンだと思いました。今回、1人のシーンも多いですが、どのような心持ちで臨みましたか?
唐田「良い意味で力が抜けていたといいますか、心構え云々というよりかは、心構えが不要なくらい、日常を過ごすように現場に“ただ居る”ことができました。現場もなんかゆったりした空気感でしたよね?」
石橋「そうですね。そういう風に役者さんに言ってもらえる現場にしたいと常に意識していますし、理想でもあるので、今それを聞けてめちゃくちゃ嬉しいです」
唐田「あ〜良かったー。話していて“プロ失格じゃないかな?”って思ったりもしたので」
石橋「そんなことはない(笑)」