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「唯一、演じ方を変えてもらいました。」
対極の2つのシーンから見えてくる主人公の気持ち

写真:宮城夏子
写真宮城夏子

 

―――今回の映画では、お酒を飲むシーンが、希のキャラクターを理解する上で、ポイントになっていると思いました。バイトの飲み会では、どちらかというと周囲の空気によってお酒を飲まされているという印象を強く受ける一方、芋生悠さん演じる加奈子とのサシ飲みシーンでは、能動的にジョッキを口に運んでいる。この2つのシーンは意識して演じ分けられたのでしょうか?

唐田「確かにバイト飲みのシーンは周りに飲まされている感がありますけど、芋ちゃんとのシーンはいつもの2人のまんまでした。私は普段、言葉数が多いタイプではないんですけど、芋ちゃんといるとすごくよく喋るんです。思いついたことをバーっと話す私に対し、芋ちゃんは聞き役になってくれて。このシーンは普段の2人の関係性が色濃く出ている気がします」

石橋「サシ飲みと、直後の自転車を押しながら帰るシーンに関しては演じ方を変えてもらいました。飲んでるシーンに関してはセリフはもちろん用意していますが、極力寄り道をしながら、崩して話してほしいということを現場でお2人に伝えました」

唐田「結構エチュードが多めなシーンでしたよね」

―――枝豆が飛び出すタイミングが絶妙でした。あれはアクシデントですか?

石橋「あれ、私が一応ト書きで、『枝豆が飛んだりする』って書いていたんですけど…」

唐田「そうでしたっけ?」

石橋「私の解釈は『あはは』って笑いながら、ガタンって器から枝豆が落ちるイメージだったんです。でも現場で私以外のスタッフは枝豆が文字通り飛ぶと解釈していたようで、『じゃあそっちで』みたいな(笑)。良い飛び方しましたよね、本番」

―――あのシーンでは、希の話すペースが凄く速かったですね。

唐田「確かに。お酒がまわっているような感じで喋りました」

石橋「個人的には、希が“ただの良い子じゃない”ということがよくわかるシーンになっていると思います。『いや、序盤のコンビニの客のことまだ根に持ってたんかい!』みたいな(笑)」

―――「主人公すらもあくまで他人として描く」というプレス資料掲載の石橋監督の言葉が印象的でした。本作は希に感情移入するというよりかは、シーンごとに希の新たな一面を発見していく面白さがあります。中盤のコンビニのシーンでは、希の思い切ったアクションに驚かされました。

唐田「あのシーンは、青年たちにおでんの器を投げてから『あれ?』と、希自身も自分のアクションにびっくりしている」

石橋「全く計画的ではないですね、希の心境としては」

唐田「作為的ではなく、突発的なアクションとして見えるように考えながらやりました」

―――『朝がくるとむなしくなる』というタイトルに反して、朝の光が非常に美しく撮られていました。ライティングのトーンはどのようにして決められましたか?

石橋「これまでは撮影時期の兼ね合いもあって今まで冬を舞台にした映画を撮れてなくて。だから今回はせっかくの機会なので、特に部屋のシーンにおいて、白く靄がかかったような美しい冬の空気感を表現したいなと考えてました」

―――どんよりしたライティングだったら、作品の印象は大きく変わったかもしれませんね。

石橋「そうですね。『朝がくるとむなしくなる』というタイトルの印象もだいぶ深刻になるかもしれませんね。タイトルも音で聞くと少し強いですが、実はギリギリまで迷った末に『来る』を敢えて平仮名表記の『くる』にして、ポップな印象にしました」

―――『朝が来ると虚しくなる』といった具合に漢字にすると、かなり重たい印象になりますね。

石橋「あとフォントも大事で、明朝体にしたらかなり重くなるんですよ。その辺りに配慮しつつ、ポスター、字体も含めて、スタッフと相談しながら作り上げていきました」

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