昭和風情を色濃く描写
原作との違い
本作の特徴として昭和の文化が色濃く描写されている。氷を入れて使用する冷蔵庫やお金を入れてレバーを回転するキャラメルの自販機など、原作で描写されているものも、ないものもふんだんに盛り込んでいる。
本作を原作と比較した際、一番大きな違いは、同級生の泰明ちゃん(松野晃士)との交流に重点を置いていること。そして、原作は主人公のトットちゃんを主語とした三人称で語られた文章であるのに対し、映画では全体を俯瞰していることにより、泰明ちゃんの感情面が描かれていることにある。
泰明ちゃんは運動が難しいため、散歩の授業のときは参加せずに一人教室で本を読んでいた。小林先生は、歩くのが遅くてもいいからと参加を促すものの、泰明ちゃんは動かない。
しかし教室に置いてある本はすべて読んでしまったという泰明ちゃんの表情は寂しげで、その表情があったことで、後半の図書館のシーンで泰明ちゃんの笑顔に筆者も救われる思いがした。