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アニメだからこそ表現できたこと
本作から見えた制作者の覚悟

© 黒柳徹子/2023 映画「窓ぎわのトットちゃん」製作委員会
© 黒柳徹子2023 映画窓ぎわのトットちゃん製作委員会

 

また、本作は冒頭に当時の時代背景に従った描写があります、といった内容の注意事項が表示される。

これは、子どものすぐ側でタバコを吸う大人の姿なども含まれるだろうが、おそらくこの注意の核心はプールの場面である。このシーンは、おそらく本作において、最も物議をかもすのではないだろうか。

小林先生は、今日は暑いからと言ってプールに水を張るのだが、みな水着を持ってきていない。だから男の子も女の子も裸で水に入るのだ。

これは、原作でも同様のエピソードがあり、事前にプールだと決まっていた日は、水着を着たい人は持ってきて構わないし、着なくても構わなかった。劇中のように急に暑くなった日は、当日にプールにしようという日も珍しくなかったという。裸は日常茶飯事だったようだ。

小林先生のこの方針は、みんな同じ人間だということを理解させ、特に身体的なコンプレックスを持っている子どもたちに自信をつけさせるという目的があったのではないかと、黒柳は原作で言及している。

生徒との接し方や、運動会の競技内容などから、小林先生が日々、どれほど子どもたちのために心を痛め慎重に動いていたのかは痛いほどに伝わる。とはいえ、このプールは今の現代社会では教育として良しとされないだろう。

もし実写作品だったらこのエピソードは児童ポルノでカットせざるを得ない筈だ。勿論アニメだからといって、採用するか議論がされなかったとはどうしても思えない。アニメだから描写できる、そしてやることに意味があると八鍬新之介監督は判断したのだろう。

水に浮き、初めて自由を感じて解放感を得る泰明ちゃんの描写から、制作陣の覚悟のようなものが感じられた。

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