安倍政権の功罪とは…? ドキュメンタリー映画『ヤジと民主主義 劇場拡大版』徹底考察&解説。忖度なしガチレビュー
text by 寺島武志
2019年夏。安倍元首相の遊説中に政権批判の声を上げた市民が、警察官によって取り囲まれ移動を余儀なくされた。この「ヤジ排除問題」を4年間にわたって追及したドキュメンタリー『ヤジと民主主義 劇場拡大版』が公開中だ。今回は本作の見どころに迫るレビューをお届けする。(文・寺島武志)<あらすじ キャスト 考察 解説 評価 レビュー>
「親・安倍VS反・安倍」という二極化が進行
「日本の民主主義は正当に機能していると思いますか?」
この問いに対し肯定的な有権者は、ほぼいないといっていいだろう。不幸なことに我が国には、自民党に対抗できる党勢を持つ政党がなく、政治不信を抱きながらも、国政選挙の投票率は下がり続け、本作の端緒となる令和初の国政選挙である2019年7月の参議院議員選挙では、選挙権が18歳に引き下げられたにも関わらず、48.8%という低投票率に終わっている。
この選挙では結果的に自民党は議席を減らしている。連立を組む公明党の躍進のお陰で安定多数を維持できたものの、“安倍一強”と呼ばれた党勢も、いわゆる「モリカケ問題」や、アベノミクスの失速により陰りが見えてきたことで、次第にアンチ安倍の声も多く聞かれるようになってきた。
そんな中で行われた選挙で、安倍首相(肩書きはすべて当時)は、日本津々浦々に応援演説に駆り出される。指定難病である潰瘍性大腸炎を抱える身であるにも関わらずだ。
安倍は2017年の東京都議会議員選挙での応援演説で失言を放っている。「安倍辞めろ!」のコールが巻き起こると、その集団を指差し「こんな人たちに負けるわけにはいかない!」と、ヤジに対して誹謗中傷と断じたのだ。
この出来事によって、国会議員も有権者も、政治の本質を見失っていく。「親・安倍VS反・安倍」という二極化が進み、国民の分断を生むことになっていく。