「アレ」を掴んだ阪神!
5月の快進撃、交流戦での足踏み、そしてマジック点灯後の無敵ぶりを、迫力ある試合映像とともに振り返った本作。
クライマックスは、9月14日、甲子園での巨人戦でリーグ優勝を決め、胴上げされるシーンだ。
そして、「関西対決」となったオリックスとの日本シリーズを4勝3敗で制し、日本一となったシーン、さらに、11月23日、御堂筋で行われた優勝パレードのシーンが立て続けに映し出される。
その後、主力選手に岡田監督の印象を聞いていく。他選手がありがちな答えをする中、主砲の大山は、指揮官の印象を「無」と表現する。大山はその意図を明かさなかったため、筆者の頭には「?」がよぎる。
まさか「無策」の無ではあるまいし、「存在感が無い」という意味でもなかろう。
考え方を変えてみれば、選手に「無」と言わしめてしまうほど、“選手第一”に徹した指揮官なのだという着地点に落ち着く。
「アレ」という言葉ひとつで選手のみならず、マスコミやファンをも巻き込み、優勝ムードを一層盛り上げた岡田の手腕は、抑えの3本柱「JFK(ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之)」に頼り切りで優勝した第1次政権時よりも、一皮も二皮もむけた印象を与えた。
こうなると、欲深い阪神ファンが連覇を期待するのは必然だ。その年齢から岡田の長期政権を望むのは酷といえるが、幸いナインは若く、伸びしろは十分にある。そこに日本一の経験も加わったのだ。
来季は他球団も目の色を変えて「阪神包囲網」を仕掛けてくるだろう。しかし、勝負どころの見極めに優れた指揮官の下、粘り強い野球で勝利を重ねたナインの経験値をもってすれば、連覇も十分可能だろう。
それどころか、今季の優勝は黄金時代の始まりに過ぎないとさえ思えるのだ。それほどまでに、今季の阪神は奇策に頼らず手堅い野球をしていたからだ。
そして岡田は来季、どのようにチームをマネジメントしていくのかも見ものだ。さらに今季の「アレ」に続くキーワードは飛び出すのか、今から楽しみでならない。
(文・寺島武志)
【作品情報】
2023年/日本/88分/G/ステレオ/16:9
監督:今村圭介
制作:ベスティ/G・G
協力:朝日放送テレビ
配給:ティ・ジョイ
製作幹事:TIME
特別協力:阪神タイガース
劇場公開日:2023年12月15日
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