宮崎駿の創作意欲を突き動かした高畑勲の死
冒頭、宮崎は語る。「人生の真実はキラキラした正しいものがあるんじゃない。ドロドロとした、色々なものを含めて全部あるから、自分の奥に隠してあることとか、眠っているものを引っ張り出して作品を作らなきゃダメな時期だろ」。
さらに、「生きるって、どういうことだか、俺だってわかっているわけじゃない」とも語る。高畑の死によって、眠っていた創作意欲が再び沸き上がってきたかのような印象を受ける。
ここで鈴木が新作のタイトルを明かす。それは『君たちはどう生きるか』。2017年5月、製作がスタートする。
引退撤回した理由について、ただ一言「忘れるから」とだけ返す宮崎。これに対し鈴木は「宮さんはウソつきだもん」と笑う。しかし不安がないわけではなかった。駄作を世に放ち、積み上げてきた名声を汚すことだけは避けたかったのだ。
そこで鈴木は、庵野秀明の下で働く天才アニメーターの本田雄をアシスタントとして送り込む。本田の登用によって、宮崎は背中を押される形となった。
鈴木が庵野から恨まれることを承知で行った、いわば“引き抜き”だ。