宮崎駿の天才たる所以
番組の最後、宮崎はなぜか『風の谷のナウシカ』の水彩画を描いている。かつて高畑に「30点」と酷評された作品だ。宮崎は、高畑の影と闘い、それを乗り越えるために描き続けるのだろうか。それを期待させるシーンで、このドキュメンタリーは終わる。
宣伝は一切なしという異例の手法も取られたにも関わらず大ヒットを記録した、今なお上映中の『君たちはどう生きるか』。このドキュメントをこのタイミングで放送した意図はどこにあるのだろうか。
筆者の勝手な推測だが、宮崎は既に次回作に取り組んでいるのではないだろうか。そしてそれは「スタジオジブリ」の完全復活を意味するものだ。
この番組は、映画製作のドキュメンタリー番組というより、宮﨑個人を描いている印象を受ける。そして宮﨑の口からは何度も「死」や「あちら(死後)の世界」について語られる。NHKの番組としては、かなり際どい内容だ。
そして、ギリギリまで編集に気を使ったことで、予告も満足にできないままの放送になったのではないかと思える。
『君たちはどう生きるか』のヒットで、宮崎は高畑を“成仏”させたかのようだが、相変わらず「パクさんに会いたい」と語る宮崎。それが彼が天才たる所以だ。
口癖の「めんどくさい」を連発させ、情けない姿をさらけ出しながらも、宮崎は描き続ける意志を、未だに強く持っていると感じさせるのだ。
(文・寺島武志)
【作品概要】
出演:宮﨑駿,鈴木敏夫ほか
語り:橋本さとし,石田ゆり子
放送日時:2023年12月16日 19:30-20:50
放 送 局:NHK総合
番 組 名:「プロフェッショナル 仕事の流儀」
タイトル:ジブリと宮﨑駿の2399日
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