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「『EUREKA ユリイカ』を観返すにはもう少し時間が必要…」目に涙を浮かべて青山監督を偲ぶ

写真映画チャンネル編集部

2017年に開催された第30回東京国際映画祭では、日本映画を牽引する4人の女優にフォーカス。そのうちの1人に選ばれた宮崎は、上映作品に『EUREKA ユリイカ』をセレクト。上映日には斉藤陽一郎に加え、青山監督も交えた3人でトークイベントを行った。

「公開から20年以上経った現在、作品を観直してどのような感想を持ったか」という観客からの質問に対し、宮崎は、青山監督が逝去して以降「『EUREKA ユリイカ』を観ることができていない」という。また、時折目に涙を浮かべつつ「観返すには、私はもうちょっと時間が必要かなと思う」と述べ、映画女優としての“生みの親”であり“育ての親”と言っても過言ではない青山監督を失ったショックを滲ませた。

時折目に涙を浮かべながら青山監督との思い出を語った写真映画チャンネル編集部

一方の斉藤は、2017年の東京国際映画祭以来となる宮崎との再会を喜びつつ、「青山さんが亡くなったことでこのトークが成立しているということがすごく悲しくて、とても複雑な気持ち」だと語る。斉藤はこの機会に『EUREKA ユリイカ』を久しぶりに観返したという。

「EUREKA ユリイカ』では重要なシーンで『お前の目を通して、俺に海を見せてくれ』というセリフがあるんですけど、今回映画を観直して、そのセリフを僕は青山さんからのメッセージとして受け取りました。海は映画に置き換えられます。つまり、『映画を観に行け』と、そして『お前の目を通して俺に映画を観せてくれ』と言われているよう気がして…。」(斉藤)

青山真治監督撮影池田正之

誰よりも深く映画を愛した青山真治。斉藤は『EUREKA ユリイカ』を観直すことで、亡くなった青山監督の思いを背負い、「これからも映画を観続け、映画の一部になれるような仕事をしていきたい」と語り、満員の場内からは大きな拍手が沸き起こった。

宮崎は斉藤の話を受け、『EUREKA ユリイカ』の続編であり、自身もメインアクターとして参加している『サッド ヴァケイション』(2007)のメイキング映像を観直し、青山監督と斉藤、光石研といった青山組の常連俳優との厚い信頼関係に改めて感銘を受けたという。

「『サッド ヴァケイション』では、光石さんと陽一郎さんが2人きりで会話をする長いシーンがあるんですけど、台本にはセリフが書かれていなくて、ぶっつけ本番の即興芝居。メイキングではお2人のお芝居とそれを見守る青山監督の姿が記録されています。お2人の素晴らしい演技、それを見つめる青山さんのニヤニヤした嬉しそうな表情、すべてが本当に素敵なんです。映画づくりの素晴らしさが詰まったメイキングですので、機会があればぜひご覧いただきたいです」(宮崎)

写真映画チャンネル編集部

今年の東京国際映画祭では『EUREKA ユリイカ』に加え、『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』(2005)『チンピラ』(1996)『SHADY GROVE』(1999)の4本の作品がラインナップ。映画監督・青山真治の魅力を再発見するために、ぜひ劇場に足を運んでみてほしい。

【第35回東京国際映画祭 青山真治監督特集スケジュール】
『EUREKA ユリイカ』11月2日(火)11:00〜 角川シネマ有楽町
『チンピラ』10月28日(金) 15:00〜 国立映画アーカイブ 小ホール
10/30日(日) 12:30〜  国立映画アーカイブ 小ホール
『SHADY GROVE』10月27日(木) 15:00〜 国立映画アーカイブ 小ホール
10/30日(日) 15:50〜  国立映画アーカイブ 小ホール

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