「マイナスワン」があらわす意味とは?
映画『ゴジラ-1.0』のタイトルの本当の意味。それは、これまでの日本映画の歴史においてゴジラが象徴してきたものに由来する。
元々ゴジラという怪物が、核戦争のメタファーとして造形されたことを知っている人も少なくないだろう。日本を恐怖に陥れるゴジラは、戦争がもたらした恐怖を追体験させるのだ。
しかし、ハリウッドがリメイクしたゴジラ映画は、上記の由来、ゴジラ=戦争のメタファーといったコンセプトから離れていった。映画『ゴジラ-1.0』はそうした潮流を踏まえ、1945年の日本を舞台にすることで、オリジナルのコンセプトを改めて観客に提示したのだ。
『ゴジラ-1.0』というタイトルに込められた想い。それは、第二次世界大戦後の日本が0(ゼロ)、つまり最低の状態にあったことを示す。そして、そのゴジラがもたらす恐怖が、第二次世界大戦後0(ゼロ)となった日本を0(ゼロ)以下の状態にすることから「マイナスワン」というタイトルが付けられた。
第二次世界大戦の連合国とは戦争で反対側にいたことから、広島と長崎への核攻撃まで、1940年代の日本は信じられないほど悲惨な状態にあった。本作では、ゴジラの出現とそれに続く日本への攻撃により、日本は復興どころか、絶滅の危機にさらされる。
また、最近のハリウッド作品、つまり”モンスター・ヴァース”におけるゴジラは、日本版における自然に近い破壊力的な存在ではなく、どこかヒーロー的な存在として描かれている。
しかし『ゴジラ-1.0』ではこれを完全に逆転させた。ゴジラの行動は巨大怪獣の本能的な破壊性を誇示してやまず、ゴジラが善意的な存在ではない、かつての破壊者としての存在に立ち返ったのだ。
映画『ゴジラ-1.0』のタイトルは、初期ゴジラ映画への回帰をあらわすと同時に、同シリーズの再始動(アップデート)の意味も込められているのだ。
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