心根は優しく他人を色眼鏡で見ない優しい男・杉元
こう書くと「バーサーカー(狂戦士)やないか」みたいに思うかもしれない。しかし根はめちゃめちゃ優しくて仲間思いで責任感の強い男だ。
そもそも『ゴールデンカムイ』はアイヌの埋蔵金を見つけることがゴールだ。では、杉元がなんで危険を犯してまで埋蔵金を探しているのか。それは昔好きだった幼馴染・梅子の眼病の治療費を稼ぐためである。
梅子は杉元とは結ばれずに、杉元の友人・寅次と結婚するのだが、彼は日露戦争で戦死する。寅次は戦時中、梅子の目の容態のことを杉元に話していた。だから、杉元は亡くなった寅次に代わり、未亡人となった梅子の眼を治すために死地で戦うわけだ。なんて責任感が強くて優しい男だろうか。
また杉元は他人を尊敬し、尊重する姿勢もある。つまり他人を色眼鏡で見ることがない。アイヌの少女・アシㇼパと旅をするなかで、杉元はアイヌの文化をどんどん吸収していくが、まったくと言っていいほど否定しないし、すぐ実践する。
例えば杉元はアイヌのどんなグロい料理でも食べる。ゴールデンカムイはある意味「グルメマンガか」というくらいアイヌの食事が描かれるが、特に相棒のアシㇼパはあらゆる動物の脳みそが大好きで、杉元に何度も振る舞う。これがかなりグロい見た目だが、杉元は毎回死んだ眼をしながらも「わ~脳みそだ~」と食べる。ものすごく寛容だ。
この寛容さは杉元の背景が関係しているという考察がされている。彼は家族を結核で亡くしたが、そのときに村八分の扱いを受けた。当時受けた差別は杉元のトラウマになっている。だからこそ、寛容な精神を持っているのかもしれない。
また自分より大きく年の離れた相棒・アシㇼパのことは「アシㇼパさん」と最後まで敬称を付ける。めちゃ細かいが、この描写は杉元の人間性の高さを描いている部分だ(おかげでファンの我々まで「アシㇼパさん」と呼ぶ文化ができた)。