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七人の侍 脚本の寸評

本作の脚本は、監督の黒澤明と脚本家の橋本忍、小国英雄の3人が共同で執筆。黒澤の愛読書であるトルストイ『戦争と平和』をモチーフに、実在する剣豪のエピソードを織り交ぜ、徹底した時代考証によって練り上げられた物語は極めて魅力的であり、3時間27分に及ぶ上映時間を片時も退屈させない。

黒澤はストーリーを盛り上げるためにキャラクターを造形する手法を嫌い、登場人物の個性を徹底的に掘り下げることで、物語に真実性を持たせようとした。その手法は本作において目覚ましい成功を収めている。

気が短く直情的な菊千代は性格に難がある上、農民生まれのニセ侍であり、仲間からは厄介者扱いされている。そんな彼は、農民側の気持ちが痛いほど理解できるため、対立しがちな侍と農民の架け橋となり、時には激しい口調で侍たちの傲慢を諌める。菊千代の短気で荒っぽいキャラクターは物語を盛り上げるためにあるのではなく、侍と農民の対立点を浮き彫りにし、和解と共闘へと至るドラマを表現しているのだ。

また、本作のストーリーラインが後世の映画に与えた影響は計り知れない。物語の前半部分で計画に基づいた仲間集めが行われ、クライマックスで計画そのものが描写される。こうした本作の構成は、『荒野の7人』(1960)のような正式なリメイク作品のみならず、『オーシャンズ11』シリーズや、香港映画『男たちの挽歌』など、世界各国の娯楽映画の定型となっている。

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