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七人の侍 映像の寸評

撮影を担当したのは、キャリア初期から後期に至るまで、数多の黒澤作品でカメラマンを務めた中井朝一。クライマックスの戦闘シーンでは、水に墨汁を混ぜ合わせて、陰影の濃い、輪郭のハッキリした雨を降らせることに成功している。これはモノクロならではの手法であり、白黒映像のポテンシャルを十全に活かした表現である。

本作の映像がスティーブン・スピルバーグやフランシス・フォード・コッポラといったハリウッドの有名監督のみならず、アンドレイ・タルコフスキーや、北野武を始めとした芸術肌の映画作家までをも深く魅了する理由は、映像表現への飽くなき探究心にあるのではないだろうか。

また、本作では複数台のカメラを用いて撮影する「マルチカム撮影法」を採用。水車小屋が焼き払われるシーンでは、8台ものカメラを使用され、複数のアングルから迫真のアクションが収められている。「マルチカム撮影法」のメリットは、ダイナミックな映像効果が得られるといった点に止まらない。カットをかけずに複数のアングルから撮影できるため、役者が演技に没頭しやすく、自然で質の高い芝居が捉えやすくなるのだ。

物語がガラッと動くシーンでは、移動撮影が目覚ましい効果を発揮している。自己中心的な農民に業を煮やした勘兵衛が刀を抜いて走り出す瞬間は、目の覚めるような横移動のカットによって描写され、ストーリーの変調を視覚的に表現。躍動感のあるアクションを捉えるためにレンズにも工夫が凝らされ、戦闘シーンは勿論、それ以外のシーンでも、画角のタイトな望遠レンズが多用されている。

「マルチカム撮影法」と望遠レンズを組み合わせることで、マクロな視点で戦場の全体像を収めると同時に、侍たちの鬼気迫る表情にもフォーカス。本作のダイナミックな映像表現は複数の技法を巧みに組み合わせることで可能となっているのだ。

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