七人の侍 音楽の寸評
本作の音楽を手掛けたのは、『ゴジラ』のスコアを手掛けた伊福部昭と並ぶ、昭和の大作曲家・早坂文雄。本作では、シンプルで力強い表現を得るために「ライトモチーフ方式」に基づいた楽曲づくりを敢行し、目覚ましい効果を上げている。
ライトモチーフ方式とは、特定の人物や状況などと結びつけられ、繰り返し使われる短い主題や動機を指し、オペラや交響詩などで活用される技法のこと。メインテーマの一つである「侍のテーマ」はいかにも雄雄しい行進曲。「菊千代のテーマ」はサックスを用いた、情熱的なマンボ調となっており、音楽がキャラクターの個性と結び付くことで、強烈なインパクトを与える。
馬の足音、激しい雨音、武士たちの叫び声。これらの要素が渾然一体となったクライマックスの音響表現には映像に拮抗する力が宿っており、久蔵が鉄砲に撃たれて絶命するシーンでは、一瞬あたりが静寂に包まれ、静と動のコントラストが鮮やかに表現されている。