芝居と音楽と。劇場で見るべき上質な描写
山田は10代の頃から持ち前のスター性で注目を集め続けてきたが、このところの映画俳優としての活躍ぶりは特に目を見張るものがあり、芝居の腕が格段にあがったことは誰の目にも明らかだろう。
ドラマ作品ではキラキラと光を放つが、ひとたび映画作品の役に入り込めば、目の輝きも存在感も尖らせたり曇らせたりと自在に操る。そして今作でのセリフのない役へと繋がるのだが、例えば荒々しい口調や心弾む様子は言葉の抑揚を使って感情を表すことは可能だ。
今作ではそれすらも叶わなかった。蒼役を演じたことは山田のこの先のキャリアに大きく弾みをつけることだろう。
久石譲が手がけた、美しくそして時に寂しく響くピアノの音色。静かでありながら心に揺さぶりをかけてくるストーリーに加えて、「いつか映画監督になったら音楽を作っていただきたい」という、内田監督が記者時代の口約束から25年、ついに奇跡のタッグとして、劇中に流れるクラシック音楽もまた記憶に深く刻まれる。
初回は物語に身を委ね、2回目は山田の芝居に着目するのもいいだろう。音響の整った劇場で鑑賞する意義を感じる作品だ。
【作品情報】
原案・脚本・監督:内田英治
出演:山田涼介 浜辺美波、野村周平、吉村界人、SWAY、中島歩、円井わん、辰巳琢郎、古田新太
共同脚本:まなべゆきこ
音楽:久石譲
主題歌:「ナハトムジーク」Mrs. GREEN APPLE
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