「お芝居で“やりすぎ”はない」映画『彼女はなぜ、猿を逃したか? 』「群青いろ」髙橋泉×廣末哲万、独占ロングインタビュー
これまでに衝撃的な作品を世に送りだし、その度に賛否両論の声を呼んできた映像ユニット「群青いろ」の最新作『彼女はなぜ、猿を逃したか?』が2月24日(土)より公開となる。今回も、前作『雨降って、ジ・エンド』に続き、髙橋泉監督と廣末哲万にインタビューを敢行。本作に込めた想いや、それぞれの演出論などについてお話を伺った。(取材・文:福田桃奈)
【プロフィール】
2001年に脚本家・髙橋泉と俳優・廣末哲万の映像ユニット「群青いろ」を結成し、デビュー作『ある朝スウプは』(2003年)では、ぴあフィルムフェスティバルでグランプリを受賞。第16回PFFスカラシップ作品として製作された『14歳』では、第36回ロッテルダム国際映画祭では最優秀アジア映画賞、また芸術選奨新人賞を受賞するなど話題を集めた。その後も製作された作品は、数々の賞を受賞し、それぞれ脚本家、俳優として個々でも活動している。
「人間讃歌を描きたい」
群青いろ作品に込められた想い
―――2月10日より公開の映画『雨降って、ジ・エンド』に続き公開される本作は、動物園の猿を逃がしたことで逮捕された女子高生に、ルポライターの記者が事情聴取するシーンから始まります。プレス資料によると、本作の着想は、高校生が猿を逃したというニュースを髙橋監督が観た時に、「なんで猿を逃したんだろう」と好奇心を抱くと同時に「それは本当に知る必要のあることなのか?」と疑問を持ったことがきっかけだったそうですね。また、本作は前半と後半で構成がガラッと変わり、後半になるにつれて、登場人物たちの関係性が明るみになっていき、さらにその先にもストーリーがある。どうしてこのような構成をとられたのでしょうか?
髙橋泉(以下、髙橋)「僕は日々脚本家として活動しているので、前半部分は、いわゆる脚本家脳を使って書いていったのですが、後半部分に関しては、『この2人をこのまま放っておいてはいけないと思いました。
“叩かれる”ことに対する抵抗感をなくして、批判が気にならないような人生を送ることができたら、“アンチに勝ったことになるんじゃないか?”と。
もちろん本作はアンチとの戦いをテーマにしているわけではありませんが、どんなに批判的な声を浴びても、自分たちの中に確固したものがあれば、もっと人生がカラフルになるのではないだろうか。後半は群青いろとしての想いを乗せて脚本を書き進めました」
―――本作は時系列が錯綜していますが、廣末さんは脚本を読んだ時、どのような印象を受けましたか? また、実際に演じてみて、いかがでしたか?
廣末哲万(以下、廣末)「脚本はもちろん面白かったんですけど、こんなにも感情の動きがジェットコースターのように乱高下して、過去も未来も現在も一気に襲ってくる感じが怖くもありました。
脚本を読んだ時は、入り組んだ時間軸がすんなりと頭に入ったんです。でも撮影時は『今撮影しているこのシーンは、いったいどこの時間軸だっけ?』と見失いそうになって…それはそれで別の怖さがありました」
高橋「監督含め全員が見失っていたから(笑)」