「夢中になって不器用に生きている人が好き」
表現者・廣末哲万の魅力
―――廣末さんの演じる人物は、それまでは普通の人だと思っていたのに、ふとした瞬間にゾッとするような表情をされることがあり、それが狂気的で怖くもあるのですが、それと同時に惹きつけられる魅力もある。そういったキャラクターをどのような意識で体現されているのでしょうか?
廣末「僕は、いつも隙があれば滑稽な部分を盛り込みたいと思う人間なんですね。それは笑かそうとするのではなく、夢中になって不器用に生きている人が好きなので。そういう部分を色んな場面に盛り込みたくなってしまうのです」
髙橋「多分ね、廣末くんが急に滑稽さを出してくるから怖いんだろうね。たとえば商業映画の現場だと観客に伝わるように、『今の面白かったから、こんな感じでやってみて』と、演出家が廣末くんの面白さをわかりやすく変換しようとするんですけど、それは簡単なことではなくて」
廣末「そういう意味では、やっぱり僕は日常ベースで考えちゃうのかもしれないですね。日常では、そういう滑稽な瞬間や狂気が垣間見える瞬間って急に来るじゃないですか。だから群青いろの感覚で、他の作品に参加すると大変なことになっちゃうんですよ(笑)。『廣末さん、今何されたんですか?』みたいな」
髙橋「僕らの中では普通なんだけどね。だからこそ僕らが作るものは、笑っていいのか、怖がっていいのか分からないものになるんだろうね。廣末くんが出演したとある商業映画で、廣末くんがパチンコ屋から出てくるシーンで僕も現場にいたんだけど、いつもみたいに唐突に滑稽なことをやるから、監督さんが『あれ、今何してたの?』って驚いていた(笑)」
廣末「『多分、パチンコで負けたんでしょうね』って髙橋さんは言ってくれたんですけど、監督さんは『あーなるほど』って苦笑していましたね(笑)」
―――予測がつかないからこそ、撮る側も観る側も面白いんじゃないかなと思います。
髙橋「でもなかなかどう乗りこなしたらいいか分からないところがあるかもしれないですけどね」
廣末「だからこそ信頼関係を築くことがとにかく大事ですね」
―――廣末さんは役者と監督両方やっていらっしゃいますが、それぞれ意識されていることはありますか?
廣末「監督としては、出来るだけそこに映っている人の良いところを逃さないように全部撮りたいって思います。演じる時は、『これをやったら笑ってくれるかな?』と自分が監督になったつもりで客観的に見ながら自分を演出しています」
髙橋「廣末くんが内側から現場を引っ張って行ってくれるんですよね。初めて僕らの作品に参加する人に対しては、廣末くんが『こういうトーンでやっていいんだよ。何をやっても大丈夫なんだよ』というのを態度で示すことで、内側から群青いろの世界観を伝える役割を果たしてくれている。それは廣末くんが監督する作品でも、実践してると思いますね」
(取材・文:福田桃奈)
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