「映画はいろいろな人との出会いの場」高校演劇を追った『走れ!走れ走れメロス』『メロスたち』折口慎一郎監督インタビュー
島根県の小さな高校を舞台に、演劇に取り組む4人の高校生を追ったドキュメンタリー映画『走れ!走れ走れメロス』。その続編となる『メロスたち』が、2024年3月22日から下北沢トリウッドで再上映される。今回は、2作品の監督をつとめた折口慎一郎氏に4人の「メロスたち」との出会いや魅力について語っていただいた。(取材・文:司馬宙)
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【折口慎一郎 プロフィール】
1988年生まれ、広島県安芸高田市出身。京都大大学院理学研究科修士課程修了後の2013年、中国新聞社に記者職で入社。18年に退社した後、大学在学中に取り組んでいた映画製作をスタートさせる。本格的なデビュー作となった「走れ!走れ走れメロス」で、第14回下北沢映画祭審査員特別賞、観客賞など四つの賞を獲得したほか、第42回「地方の時代」映像祭市民・学生・自治体部門優秀賞、うえだ城下町映画祭自主制作映画コンテスト実行委員会特別賞、東京ドキュメンタリー映画祭2022入選など。
4人の「メロスたち」と、恩師・亀尾先生との出会い
――この作品は、島根県で最も小さな公立学校である県立三刀屋高校掛合分校が舞台になっています。折口監督がこの高校に目を付けたきっかけはなんでしょうか」
「2021年にちょうど仕事で島根県に行った際、島根在住の大学のサークルの後輩からお話をいただいたのがきっかけでした。その方は、高校の時に演劇部に所属していたんですが、当時の顧問が企画していた市民演劇がちょうどコロナ禍で中止になった直後で、舞台と映像で何かできないかと」
――その顧問が、映画にも登場している亀尾佳宏先生ですね。
「はい。で、その後すぐに亀尾先生と会って、テーマから一緒に構想しました」
――では、はじめはドキュメンタリーを作るつもりはなかったということでしょうか。
「最初はフィクションの映画を撮る予定で、台本も僕が書いていました。ただ、役者が全員素人なので、いちからフィクションを作っても寒いことになるんじゃないかという話が出て。で、最終的に亀尾先生が掛合分校に面白い生徒がいるから、ウチの生徒でドキュメンタリー撮ろうぜ、と」
――では、ドキュメンタリーというアイデアは、亀尾先生自身の発案ということですね。
「そうですね。下北沢での公演も、基本的に亀尾先生が窓口になっていて。作中で起こる事件は全て亀尾先生が巻き起こしているイメージですね(笑)」
――亀尾先生は作中でもかなり存在感を放っていますが、具体的にどういった方なのでしょうか。
「大学時代に演劇をやっていて、今は高校演劇と並行して、島根の市民劇団の作・演出も毎年されています。なので、アマチュアの市民と舞台を作るというのを長年やってきた方なのかなと。赴任した高校の演劇部が軒並み県大会を突破しているので、かなり腕のある演出家なんだと思います」
――そういったすごい方が実は地方にたくさんいるかもしれないですね。
「そうですね。それに亀尾先生は、すごく楽しそうに演劇をするんですよね。それを観ていると、こっちまで演劇をやってみたくなるような。なので、この作品は実は亀尾先生が引っ張っているのかなと言う印象もあります」