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ドキュメンタリーで描く“劇的な瞬間”

©プロダクション26
©プロダクション26

――撮影中はほとんど演出してないのでしょうか。

「そうですね。カメラを見ないで、というのと、自分の言葉で話して、という部分だけ伝えて、あとはとりあえずカメラを回しました。僕自身、生の素材やアクシデントに魅力を感じているし、観客も監督の主張ではなく、彼らのありのままの姿を見たいと思うので」

――たしかに、4人に静かに寄り添っているような視線がとても印象的でした。ちなみに、編集はどのように行ったのでしょうか。

「僕と撮影担当、それから亀尾先生たち島根のメンバーで相談しながら進めました。ただ、芝居をじっくり見せるのか削るのかで意見が割れることが多かったですね。

個人的には、あくまでエンターテインメントとして楽しめるものにしたいと思っていて、構成上はハリウッドの3幕構成を意識していました。『走れ!走れ走れメロス』ではコロナを、『メロスたち』では東京を4人の葛藤に据えています」

――確かに、地方の高校生が東京に立ち向かうという筋書きは、日本人の心に響くものがありますね。ちなみに、演出する上で、参考にした映画作品はありますか。

「濱口竜介監督の『ドライブマイカー』(2021)と、クロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』(2021)ですね。

『ドライブマイカー』は、あくまでフィクションなんですが、舞台に取り組む役者の内面の変化そのものを映しとっているように感じました。一方、『ノマドランド』は職を失った「ノマド」たちを取り上げたノンフィクションが原作になっていて、メインキャスト2人以外は実際に車上生活を送るノマドの当事者が起用されています。

個人的には、『ドライブマイカー』が、フィクションの枠内でドキュメンタリー性を突き詰めた作品ですが、『ノマドランド』は、ノンフィクションをもとにフィクションを構築していて、はじめて観た時はこんな描き方があるのか、と感心しました。

で、『走れ!走れ走れメロス』『メロスたち』では、亀尾先生が当て書きした戯曲から、4人の人生に訪れる劇的な瞬間を描くということを心がけました」

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