「メロスたち」の現在地とこれから
――『走れ!走れ走れメロス』に続く第2作『メロスたち』では、4人のメンバーが卒業し、それぞれの進路に進む中で、曽田昇吾くんがひとり演劇の道を志す様子が中心に描かれています。
「亀尾先生が作中で言及していたように、彼はもともとかなりのトラブルメーカーでした。ただ、声がとても良かったので、亀尾先生は目をつけていたようです。僕も最初会った時は、存在感がすごくて怖さすら感じていたんですが、今ではすっかり役者の顔立ちになりましたね
ちなみに、以前島根県警察の少年補導ボランティア向けの青少年ボランティアで上映もあったしたんですが、「がんぼ」(広島弁で悪ガキ)が演劇と出会って変わっていく様子に、いたく感動されていた人もいました」
――たしかに曽田くんは、演劇に出会って本当に人生が変わりましたよね。ちなみに、他に印象に残った生徒はいますか?
「それぞれの良さがありますが、石飛圭祐は印象に残っていますね。彼が紡ぎ出す言葉は、少しぎこちない部分があるんだけど、それが見事に映画的な間になっている。リアルなんですよね、彼の言葉は。この映画が作品として成立したのも彼のおかげですね。
佐藤隆聖も、最後の大会前に自分の思ったことを飾らずに伝えてくれましたね。そういう嘘いつわりのない言葉があるからこそ、観客の心に響くんだと思っています。
あと、常松博樹は、言葉のはしばしに人への優しさが垣間見れましたね。最初に声をかけてくれたのも彼だったし、話してて楽しかった。彼は、卒業後に自衛隊に入ったけど、この前島根県知事に表敬訪問した時に、一緒に来た自衛隊の広報の人に市民劇団に入りたいって言ってましたね」
――ちなみに、観客の方からは、どういう反応が多いですか?
「ポジティブな意見をたくさんいただいています。面白いのは、立場によって感想が全く違うことですね。役者さんは、舞台上の彼らに若かりし頃の自分の姿を重ねあわせたり、子どもを持つ親御さんは彼らに自分の子どもの姿を重ね合わせたり、学校の先生は彼らをいち生徒としてみて成長を感じ取ったり。
それから、宮崎で上映した時にとある俳優さんが見に来てくれたんですが、亀尾さんに自分の亡き恩師の姿を投影し、涙が止まらなかったとおっしゃっていました」
――顧問側だけでなく、生徒側に感情移入する方もいらっしゃるんですね。
「そうですね。そういう意味では、映っている全員が、それぞれのドラマの主人公なのかもしれません」